水の都の巫女 | ナノ


06

 ボクとリーフィアが睨み合っていると扉が開いて、リーフィアは扉の方に視線を向けた。

「お邪魔するよ、ダイゴ。……随分と空気が刺々しい」

「なんだ、ミクリか…」

「なんだとはなんだね。おや、可愛らしいポケモンなのに随分とご立腹じゃないか。どうしたんだい?」

「あ、ミクリ。そのリーフィアに近づいたら…」

いきなり近づいてきたミクリに全力で威嚇するリーフィア、突然の来訪客とリーフィアの威嚇っぷりに困った表情をするバクフーン。ボクはこの状況を解決できそうな彼女が早く目覚める事を祈った。

「なるほど、自分が何もできなくて怒っているんだね?」

唐突にミクリが話し出して1人で納得をしていた。

「ミクリ、どういう事だい?」

「このリーフィアは彼女が何らかの事件に巻き込まれた時に助けれなかった事を悔やんでいる。バクフーンもそうだ。だから彼女を大事そうに抱えている」

バクフーンを見ると静かに頷いた。

「だから自分に怒りつつ、彼女に近寄る者を追い払おうと必死になっていた。そうだろ?リーフィア」

ミクリの言葉にリーフィアは悔しそうに頷いた。どうやら図星らしい。

「ボスゴドラを倒す勢いで攻撃してきたのはそういう事だったんだね」

「もしかして砂浜に大穴を作ったのは君のボスゴドラかね?」

「いや、リーフィアだ」

「ほぉ…?」

「ミクリが見てもあの大穴を作ったのはボスゴドラだと思ったのかい?」

「そう思うのが普通かと。しかしリーフィアが…」

ボクもリーフィアがあそこまで攻撃力があるとは思わなかったし、素早さが段違いだった。このリーフィアを連れているこの子をクチバで見た時に実力があるのは知っているけど、一体何者か気になっていた。すると、ベッドからうめき声が聞こえてきた。

「う……ここは……?」

「おや、お目覚めのようだ」

「よかった。目が覚めたみたいだね。ここはトクサネにあるボクの家だ」

バクフーンに抱かれたままの彼女が目を開けるとボクを見て驚いていた。

「あ、クチバで会った…ダイゴさんですよね?」

「そうだよ」

「よかった……ホウエンに来たら会おうと思ってたのでちょうどよかったです。ありがと、バクフーン。もう大丈夫だから」

バクフーンから離れてリーフィアを抱えると椅子に座った。

「リーフィアもごめんね、心配かけさせちゃって。海の中じゃ戦えないからねー…」

「海の中って一体何があったんだい?砂浜に倒れていたし…」

「あー…船でカントーからホウエンへ向かってる途中に嵐に巻き込まれて海に落ちちゃったんです」

その言葉でニュースでやってた旅客船の行方不明者が彼女だとわかった。

「嵐で荒れている海に落ちたのによく生きて流れ着いたね…」

「まぁ…運が良かったと思います。あ、ポケギア水没したから電源つかなくなっちゃった…」

どっかの誰かみたいに落石に挟まれても軽傷で済んでいた人もいるけど、彼女の場合は水中だから運が良かったとしても溺れしまう可能性の方が高い。他に助かった理由があるかもしれないけど、彼女はポケギアを机に置いて話題を変えようとした。

「それで私、ダイゴさんに聞きたい事があるんです。と、その前に砂浜で倒れていたところを助けてくれてありがとうございます。私はジルチです」

「ジルチちゃんだね。リーフィアがいきなり攻撃しかけてきたから驚いたよ」

「えぇ!?す、す、すみません!!リーフィア?いくら知らない人が私に近づいてきたとしても、危害を加えてきてない人を攻撃しちゃダメだよ!危害を加えてきた人なら容赦なく叩きのめしていいから!」

「それはそれで違うような気もするが…。私はミクリ、ルネシティのジムリーダーだ」

「ミクリさん、ですね」

お互い自己紹介をしたところでジルチちゃんが本題に入ろうとしたらミクリが手をぽん、と叩いた。

「君は確かカントーのチャンピオンじゃないか?」

「そうなのかい!?」

「元チャンピオンです。今はチャンピオンの座を降りてワタルさんに返しましたよ」

「それを言ったらボクも似たような立場かな…」

「え?ダイゴさんってチャンピオンじゃないのですか?」

「コガネ出身の子に負けたけど、今は彼女が不在だから代わりにチャンピオンの座を守っている。今のボクはチャンピオンと言えるようで言えないかな」

「なるほど、そういう事でしたか…」

まさかクチバで会ったジルチちゃんがカントーのチャンピオンになっていたのは驚いた。あの時に見た彼女の目は確かにいい目をしていたのはよく覚えている。


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