04
甲板でジルチが波に飲み込まれて、僕が必死に手を伸ばしたけど助ける事ができなかった。すぐにカメックスを出して海へ飛び込もうとしたら高波によって船内へ押し戻されてしまった。
そして、今はジルチのいない部屋の中でやるせない気持ちでいた。
ジルチがいないと察したジルチのポケモン達が少し騒がしかったけど、僕の気持ちを察して今はライボルトとシャワーズだけボールから出てボクのそばにいる。
「ごめん…ジルチを、助けれなかった」
何度目かわからない謝罪に2匹は黙って聞いていた。
ベッドの上でうずくまっているとドアを控えめにノックする音が聞こえた。
「レッド、さん…」
「いますか…?」
女の子と男の子の声が交互に聞こえてきた。
「ジルチさんに助けてもらった、ランです」
「ぼくはフウです。ジルチさんが海に引きずられたあと」
「ジルチさんを探していると」
「海の神様が助けてくれたんだ!」
2人の言った事に驚いて扉を思いっきり開けるとダブルバトルをした双子がいた。
「その話、本当?」
「本当だよ!」
「ぼく達、超能力が使えるんだ。ジルチさんはそのまま海の神様と一緒に行動してるみたいだけど」
「離れすぎてジルチさんが見つからなくなっちゃった」
「もっと遠くを探せるようにレッドさんに協力をしてもらいたくて!」
「それで…僕にできる事ある?」
「ジルチさんが普段身につけてる物ありますか?」
立ち話をするような内容じゃないと思って、とりあえず2人を部屋に入れた。机に置いてたジルチが普段身につけてる髪飾りを渡した。
「旅に出てる時からずっと身につけてた髪飾りだけど…これをどうするの?」
「ジルチさんを探す!」
「フウ、やるヨ!」
「うん!」
「?」
何をするのかと思って見ていると2人が髪飾りを持って目を閉じた瞬間、不思議な雰囲気が漂ってきた。その雰囲気にライボルトとシャワーズが近づいてきた。
しばらくすると2人は目を開けて何度も頷いた。
「見つけたヨ!」
「ジルチさんと海の神様の目的地は」
「「トクサネ!!」」
「そのトクサネってどこにあるの?」
「ぼく達が住んでる街!この船はミナモシティへ行くから」
「そこから東の方角に行くとトクサネに行けるヨ!」
「「バンザーイ!!」」
2人のおかげでジルチの居場所がわかった。とにかく無事だという事が確かで海の神様が何者かは知らないけどお礼を言わなきゃと思った。マツバさんの「海には気をつけて」がこの事だとは思いもしなかった。
次からは別々で行動せず、ジルチのそばから離れないようにしよう。
「2人とも、ありがとう」
「お礼を言うのはぼく達の方!」
「まだジルチさんにちゃんとお礼が言えないもん!それと…レッドさんに迷惑をかけて」
「「ごめんなさいっ」」
「いいよ。僕もジルチと別行動してたのも悪いからね」
ジルチの髪飾りを受け取って上着のポケットに入れた。
「そういえばジルチさんって超能力が使えるの?ランを浮かせて船内まで飛ばしたからビックリした!」
「波の流れを変えた時に聞いたけど曖昧な感じに答えてたヨ?」
「…ジルチはどう言ってた?」
「確かちょっと違うかもって言ってたヨ」
「じゃあ僕から言える事はそれだけだよ。他の人の超能力がどういったものかは知らないけど、ジルチはちょっと違う」
さすがにポケモンと人の間に産まれた子とかポケモンの技が使えるとは言えない。
「あとジルチさんに触れられた時、ポケモンと同じ感じがしたヨ!」
「ぼくもジルチさんに頭を撫でてもらった時も感じた!」
「!!」
「不思議な感じだけどジルチさんはいい人!」
「優しい人!」
この2人はもしかしたら気づいてるかもしれないけど、ジルチの事を怖がる様子もなく気に入ってるのは確かだと思った。
嵐の影響で予定より到着が遅れると船内のアナウンスが流れた。
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