03
海に引きずり込まれてから息が出来なくて苦しんでいた。海の化身と名乗る得体の知れない何かは海の中でも私を掴んだままで離そうとしなかった。
「っ(息が…っ)」
能力を発動しようと足掻くけど、さらに強く握りしめられて身体が悲鳴を上げた。持っているボールはバクフーンとリーフィアだから海の中では出せない。
このままでは溺れ死んでしまうと思っていると腰にあった鈴が水中だというのに音が綺麗に響いた。
「!?(ルギアから貰った鈴が…鳴ってる?)」
水中で鈴が鳴り始めてからどこからか勢いのある水流が押し寄せてきた。
『スイクンやホウオウが言ってた通り、世話の焼ける娘だ。我が水の加護を授けているにも関わらず、その娘を食おうとする海の化身よ。消え失せろ!!』
―グググ…貴様ァ……!!
「…っ(ルギア!?)」
ルギアが何かを放つと私を掴んでいたものと海の化身は気配を消した。だけど息に限界がきて口を開けてしまった。
『いかん、人の子は水の中で呼吸ができなかったな』
ルキアの翼に囲まれると大きな泡ができて私を包んだ。
『この泡の中なら呼吸ができる。…久しぶりだな、ジルチ』
「けほっ…!!うぅ……助けて、くれてありがとう。それと久しぶり、ルギア……」
『以前よりポケモンの血が濃くなったような感じがする。目の色も片方変わっているな…』
「それは…チョウジタウンで力を無理矢理引き出されて暴走したからだと思う。ミュウツーがエネルギー?の流れが乱れているって言われた」
『なるほど、そういう事か』
「ところでここはホウエンの海だけど、どうしてルギアはここに?それにルギアから貰った鈴が水中で鳴り響いたけど…」
『ム、それはマツバという男からスイクンに、スイクンから私にジルチがホウエンへ向かったと聞いて、ホウエンを目指して泳いでいたからだ。水関係で危機が迫った時、水中でも鈴は鳴り響く。そのおかげでジルチの居場所がわかったがな』
「そうなんだ…本当に助かったよ。まさかカイオーガに襲われるなんて思いもしなかった……。身体が痛むしちょっと疲れた、かも」
『奴は本来の力を失っているようだった。その力を取り戻す為に力のある人間を食おうとしたのだろう』
あの時、ランちゃんはカイオーガに恐れていたから動けなかったんだとわかった。ランちゃんを助けれなかったらあのままカイオーガに食べられていたと思うと鳥肌がたった。
カイオーガが力を失ったのは2人のトレーナーと戦った時のはず、確か資料にアクア団が眠っていたカイオーガを起こして力を与えた。そのあと目覚めの祠にて2人のトレーナーの活躍によってカイオーガを鎮めたと書いてあった。カイオーガからすれば身勝手な人を恨むのも…わかる。
「……カイオーガは…どうしたの?」
『威嚇をしたらどこかへ消えた。また現れるかもしれないから気をつけるんだな』
「わかった。カイオーガと…和解できないかな……?」
『不可能ではないと思うが危険だ』
「そっか……」
『…奴に少し力を取られているからジルチの体力が減っている。少し眠るといい。その間にここから近い島へ送ってやろう。あとの事は人間に任せるがな』
ルギアは私を包んでいる泡を背中に乗せてゆっくりと泳ぎだした。助けてくれたルギアに感謝しながら目を閉じた。
「ありがとう……」
『気にするな。って聞こえてないか』
泡の中で心地良さそうに眠るジルチを見てルギアは小さな声で歌い始めた。
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