02
女の子は泣きそうな顔で船の柵にしがみついて座り込んでいた。
「私が助けに行きます。紐付きの浮き輪を貸してください」
「あ、あんたはカントー地方のチャンピオンの…!あの子にいくら声をかけても返事がないんだ…。きっと怖くて仕方ないかもしれない。助けてあげれそうか?」
「元、チャンピオンですよ。任せてください」
船員から浮き輪を受け取って、腕に通した。すると後ろから服を引っ張られて振り向くと双子の男の子が半泣きになっていた。
「君はさっきの……」
「お姉さん、ランを助けて…!」
「あの子、ランちゃんだね?大丈夫、私が助けるから心配しないで」
「ランは…何かに怯えて動けないんだ。ぼくも怖くて……」
その何かが原因で動けなくなったのならその正体をわからなきゃいけないと思いながら男の子の頭を撫でた。
「わかった。ランちゃんの所まで行くから話を聞いてみるよ。それじゃ」
甲板に出ると雨と風が強く吹いて波が荒れていた。足を滑らせないよう慎重にランちゃんがいる所まで近づいた。
「っ!お姉さんはさっきのバトルしてくれた…」
「うん、私はジルチ。ランちゃんだね?助けに来たよ」
「ありがと…。でも、あたしが離れたら船が沈んじゃうかも……!!」
「え?どういう意味?」
「ジルチさんっ!逃げてっ」
「!?」
ランちゃんが叫んだ途端、高波が船に襲いかかってきたから慌てて腕に通してた浮き輪をランちゃんの身体に通した。
波が私達を飲み込む前にサイコキネシスで波の流れを変えた。
「ジルチさんも…超能力使えるのですか?」
「ちょっと違うかも。さて、今のうちに船内へ移動しよう。胸騒ぎがする」
―逃ガサナイ……
一緒に船内へ向かおうとしたら頭の中に不気味な声が響いた。
「何、この声…!?」
「怖い、怖いよぉ!」
―力ヲ 持ツモノ ワレガ 喰ウ。水ノ巫女、マズハ 貴様カラ ダッ!!
ザバーン!!と凄まじい音が聞こえて振り向くとさっきより高い波があった。その波は手のような動きをして私達に襲いかかってきた。
「ランちゃん、ごめん!思いっきり投げ飛ばすから船員さん達に受け止めてもらって!!」
「きゃぁあっ!!」
ランちゃんの身体を抱えてからサイコキネシスを使って、思いっきり投げ飛ばした。船内にいた船員さん達は慌ててランちゃんを受け止めにいった。
「私が水の巫女と知ってるだなんて…お前は何者だ!?」
―ワレハ 海ノ化身 ナリ。身勝手ナ 生キ物ノ全テ、無ニ還ス !
「海の…化身!?まさかっ!!」
「ジルチ!!」
騒動に気づいたレッドが浮き輪抱えて甲板に来ていた。
「レッド、来ちゃダメ!!来たらあいつの波に飲み込まれる!!」
「な…!?」
―水ノ巫女ノ血、イタダク!
「っ!」
波が私を掴んで海へ引きずり込もうとした。
「ジルチーっ!」
「レッドー!」
レッドと私が腕を伸ばしたけどあと少しで届かず、私は波に掴まれたまま海に沈められた。
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