水の都の巫女 | ナノ


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 いつの間にか眠らされたり、定期的に食堂や仮眠室へ連れていかれたりされたけど、ある程度の情報を手に入れて資料は地方別にファイルにまとめた。

「んんーっ!お父さんに関しての情報はさっぱりだったけど、奴らの手がかりは掴めたから今はこれでいいかなっ」

そろそろホウエンにいるはずのお父さんを探しに行こうと思っているとワタルさんが事務室に入ってきた。

「うん、食事、睡眠をしっかり摂っているようだな。顔色がよくなった」

「誰かさん達が決まった時間に事務室に来るからですよ。でも…ありがとうございます。私もお母さんの悪い癖が出るとは思いませんでした」

「親子揃ってその困った癖だとはな…。調べ事をしている時は周りが面倒を見ないといけないな。紙の山が綺麗になくなったって事は…そろそろか」

「はい。結局ソウルは私の所まで来れませんでしたね」

「ずっとカリンで苦戦していたからな。少しずつ強くなってポケモン達と理解し合えるようになったがまだまだだ」

「そのようですね。…ワタルさん」

「何だ?」

「今までお世話になりました、ありがとうございます」

「あぁ。彼によろしくと伝えてくれよ?」

「もちろんです。では、行ってきます」

「行ってらっしゃい…で、合ってるかわからないが、たまにはここに帰ってきてもいいからな。いつでも歓迎する」

「ふふっカントーとジョウトは…私が帰る場所が多いですね」

ワタルさんと握手をして事務室を出ると四天王の皆さんがいた。

「もう行くのね。貴女ならどんな困難でも立ち向かえるわ。頑張って」

「カリンさん、ありがとうございます。またお茶を飲みましょ!」

「もうボクのナッシーにさいみんじゅつをかけられずに済むね。最後まで君に勝てなかったのが悔しいよ」

「だんだんさいみんじゅつに耐性ができた気もしますよ。またバトルの相手をしますよ、イツキさん」

「お前のハイパーパワー、親父さんにぶつけてやれ」

「シバさんに鍛えてもらったこの拳、必ずお父さんを殴ります!」

「……ファファファ!拙者の忍術を見たければまた来るがいい!」

「また来ますよ!…ファファファ!それでは皆さん、ありがとうございました!!」

4人に頭を下げて、激闘を繰り広げて熱い思い出のあるポケモンリーグを出た。

「レッド!お待たせ!」

「クチバに向かう前にエンジュに寄るんだっけ?」

「そうだよ。マツバさんが立ち寄って欲しいって言ってたからね。でもその前にワカバタウンに行ってくれる?ウツギ博士に報告しなくちゃ」

レッドはリザードンに乗っていたから私もその後ろに飛び乗った。

「わかった。リザードン、まずはワカバタウンまで飛んで」

リザードンは吠えると力強く羽ばたいてワカバタウンへ向かった。

 ワカバタウンに着いて研究所の扉を開けるとウツギ博士が出迎えてくれた。

「おかえり。ジルチちゃん、レッド君。その様子だとホウエンへ行くんだね?」

「はい!その事をウツギ博士に報告しようと思って帰ってきました。あとはコトネちゃんが届けてくれたアルバムを部屋に置きに来ました」

「コトネちゃんが撮った写真だね。いつの間に撮ったかわからない写真もあったから彼女の技術力には驚かされたよ」

「本当にそうですよね。このアルバム、部屋に置いてきます!」

パタパタと2階へ上がって自分の部屋に入って本棚の空いてる所にアルバムを入れた。

「……次はホウエンの旅。待っててね、お父さん」

写真にある白い街並みはホウエンにあるのなら1度見てみたいなと思いながら1階へ戻るとレッドがお菓子を食べていた。

「ウツギ博士の奥さんが作ったんだって」

「むぐっ……美味しい!」

レッドにいきなり焼き菓子を口に入れられて、口の中でふんわりと紅茶の味が広がった。

「ジルチちゃん。ホウエンは少し遠いけど身体には気をつけてね」

「はい、気をつけます!では、行ってきます!」

「2人とも、行ってらっしゃい」

研究所を出て、私は隣にあるお母さんのお墓へ向かった。

「お母さん、ホウエンへ行ってきます!この先何があるかわからないけど…頑張るから!」

お母さんに挨拶を済ませて私達はエンジュへ向かった。


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