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数日後、ワタルさんが追加の資料を届けに来て、机にある紙の山で1番低い場所に置かれた。
「資料を見るのはいいが、ちゃんと直してくれよ?」
「……資料室にあった資料は全部元の場所に戻しましたよ」
「じゃあこれは……」
「欲しい情報をリストアップした物です。あと…その地方に伝わる伝承も気になりますからね」
「……崩れる前にまとめておくんだ。それとちゃんと寝ているか?ご飯を食べているか?少しジルチの顔色が悪いし……レッドは?」
ワタルさんが周りを見ている時に置かれた追加の資料に手を伸ばした。
街とかはここにあった資料でわかっていたけど、遺跡や伝説に関しては触れる程度しかなかった。
「少し前に…出かけました。…この男が……あ、ここの海底遺跡…にある古代文字かな、暗号かな……気になる!!」
「……とにかくほどほどに、な。その地方の組織、人物、伝説とかジルチが気になりそうな事の資料もあるから」
「さすが、ワタルさん!!ありがとうございます」
気になっていた海底遺跡の資料が最後の方にあって発見された暗号を見た。お母さんの書斎に似たような文字があったような気がするけど、あそこにあった研究資料は読み尽くしたはず。
「ジルチ、やっぱり少し寝た方がいい。ホウエンに行く前に身体を壊すぞ」
「…………」
ジルチは海底遺跡の資料に書かれた暗号を見つめたまま反応しなかった。集中すると周りが見えない、聞こえないのかもしれない。どうしたものかと思っていたらカリンが事務室に入ってきた。
「ジルチ、お茶を飲みに行きましょってまだ紙の山に囲まれてたの?」
「まだって…ジルチはいつからここにいるんだ?」
「私が昨日お茶を誘いに来たときからかしら?」
徹夜しているのかと思っていると次はイツキが入ってきた。
「ボクが2日前に来た時はスコーンを片手に険しい顔で資料を見てたよ」
一応軽食を食べているようだが寝たという事実がない。そこはレッドに聞けばわかるかもしれないが…。
「はぁ……シズクの悪い癖が受け継がれてしまったな」
「…………」
3人も事務室に来ているのにジルチは全く反応なし。目を開けたまま寝てるんじゃないかと思う。
「……イツキ」
「なんだい?」
「ジルチを眠らせてやれ」
「了解。ナッシー、さいみんじゅつ」
ナッシーのさいみんじゅつをかけられてジルチは眠り、紙の山に埋もれた。
「…これでいいかい?」
「あぁ、助かった。しばらくの間大人しく眠ってるだろう」
イツキのナッシーが出てきても気づかないだなんて相当集中してたのはわかるが、無防備すぎるような気がした。
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