水の都の巫女 | ナノ


18

 日が暮れて空が茜色に染まる頃にシズクは研究所を出た。

「んーっある程度資料まとめたし、これからの課題も決まったし、今晩は言うって決めたから帰ったらご飯の支度をしよう」

背伸びしながら家の方角へ歩いてる途中、レッドとグリーンと一緒に歩いてるジルチを見つけた。

「本当に仲がいいわねぇ。いいライバルになりそう」

そんな3人を見ているとジルチが母親の存在に気づいて、2人に手を振ったあとこちらに向かって走ってきた。

「お母さん!ただいま!!」

「おかえり、ジルチ。土まみれになってるけどどうしたの?」

ジルチのワンピースが所々、土で汚れていた。

「かくれんぼしてるときに汚れちゃった!」

「かくれんぼでそんな汚れるかしら?」

「木の上とか草の中に隠れたりするから汚れるよ?」

「…帰ったら先にお風呂入るのよ?」

シズクはそのうち水の中とか土の中に隠れたりするんじゃないかと思った。

「うん!お母さん、今日2人ともポッポをゲットしたんだって!」

「ポッポいいわね。ラクライの調子はどう?」

「ばっちり!」

ジルチはニコニコしながら指でVの字を作った。

「そろそろレッドくんにリベンジかしら?グリーンくんとはどうなの?」

「んー5回バトルしてて…そのうち3回勝ってる!」

「ジルチが勝ち越してるのね」

「そうだよ!グリーンくんが次は負けない!って言ってたから頑張らなきゃ」

ジルチは夕日に向かってぐっと拳を作った。

「お母さん…わたしね、レッドくんたちと一緒の日に旅に出るって決めたの」

「!」

「一緒に旅をする仲間を集めて…一緒にジムを行ってバッチ集めて、それからチャンピオンリーグに行くの。もしかしたらお互いどっちが先にチャンピオンになるか競争し合うかも」

シズクはジルチの話を黙って聞いていた。
本当に目指す目標ができてまっすぐ貫く意志を感じた。しかし、1つ問題があるとしたら一緒に旅に出てもジルチだけ違う地方へ行ってしまう事だった。

「…いい目標が出来てよかった。母さんジルチがこれからどうするのか聞いてなかったから不安だったのよ?」

「でもラクライと友達になったときから旅に出る事は考えてたよ?」

「え、そうだったの?」

シズクはホウエンにいた頃から旅の事を考えてたことに驚いた。

「だって世界は広いんでしょ?いろんな事を体験したいし、お母さんみたいにポケモンの事や昔の事をもっと知りたいもん!」

「そうね、世界はとても広いわ。各地方にはまだわかっていないポケモンや文明があったり伝承もある、母さんはそれを知りたいわ」

シズクは茜色の空を見上げて大空に手を伸ばした。

「ジルチ。旅に出て世界を見てきて、たくさんの事を経験して学ぶのよ?それがいつかジルチの力になるから」

「うん!ありがとう、お母さん」

ジルチは母が旅の応援してくれる事が嬉しくなって笑顔になった。

「それと帰ったらその事で大事な話があるから聞いてくれるかしら?」

ふと、母の表情が真剣なものになってジルチは黙って頷いた。


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