水の都の巫女 | ナノ


21

 2匹がぶつかり合い、ピカチュウとバンギラスは後ろへ突き飛ばされた。そして……2匹とも目を回して起き上がれなかった。

「……相、討ち?」

「みたいだね」

「両者戦闘不能、勝者は……ジルチか?」

「違いますよ」

ワタルさんの判定のセリフに私は反対した。

「カイリューは氷状態になっただけとはいえ、戦えない状態に変わりないですよ。だからこのバトルは、引き分けです」

「そうか。じゃあこのバトル、両者引き分けだっ!!」

ワタルさんの宣言を聞いて私達は頷いた。オーキド博士は感動して涙流しながら拍手している。

「レッド、お疲れ様。引き分けになったけどいいバトルだったね」

「ジルチもお疲れ様。フルバトルは久しぶりだったし、ジルチ相手だからどうなるかわからなかったよ。…いいバトルだった、ありがとう」

「すすす、すごいバトルでした!では、新チャンピオンさん!インタビューお願いします!!」

「えっと…その、ここまで来れたのは私を支えてくれた人達とこの子達がいてくれたからです!皆さん、ありがとうございましたっ!!」

「いい、バトルじゃった…っ!本当に、成長したのぉっ」

オーキド博士は泣きながら私とレッドの肩をバシバシと叩いた。

「オーキド博士、落ち着いてください…!あっ!レッド、ポケセンで皆を治療しなきゃ!」

「うん!受付の所にヒビキとソウル居たよ」

「本当!?まだいるかなっ?オーキド博士、ワタルさん、また後で!」

私達はチャンピオンの部屋から四天王の部屋へ戻る感じに走っていった。

「…全く、あんな凄いバトルをしたあとだというのに元気だな」

「子供は元気が1番じゃからな!さて、ジルチちゃんのリーグ制覇とチャンピオンおめでとうのパーティーの準備をせねばな」

「セキエイ高原にある会議室を丸々使いましょう。チャンピオン就任についてジルチに話さないといけない事が山のようにある」

レッドみたいにいきなりチャンピオンの座を降りられると俺が困るからあらかじめ聞いておく事がある。

「ありがたい!この実況を見たグリーンがこっちに向かっとるじゃろうし大人数になるかもな!」

「ジルチにとってかけがえのない思い出になるでしょう。では、先に失礼します」

四天王の部屋からキョウの独特な笑い声とそれを真似している2人の声が聞こえてきた。オレは別の出入口から外へ出た。
バトルをしていて気づかなかったが空は茜色に染まっていた。沈みかけの太陽を見て俺はシズクの事を思い出した。

「…シズク、空から見ているか?お前の娘、ジルチがあんなにも成長したんだ。心配する事はまだあるだろうけど今は安心しろ……」

俺の独り言に応えるかのように優しく暖かい風が吹いた。

「サフィラス、お前にも見せたかったな。ジルチの戦いぶりを…」

全てのバトルは実況で全国放送されているからもしかしたらホウエンで見ているかもしれないと思いながら、いろんな方角からこっちに向かって飛んでくるトレーナー達を迎え入れる為にセキエイ高原にある会議室へ向かった。


prev / next

[ 目次に戻る ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -