水の都の巫女 | ナノ


16

 カイリューが倒れてワタルさんがボールに戻すと、少しの間チャンピオンの部屋が静かになった。

「…勝った……!」

「おめでとう、ジルチ!!」

後ろから駆けつけたレッドに抱きしめられて喜び合った。

「……終わった。だけど不思議な気分だよ。きっと負けた悔しさより、いいチャンピオンの誕生に立ち会えた喜びの方が大きいからかな」

ワタルさんが拍手しながら私達に近づいてきた。

「何だかスッキリしましたよ。バトルする前はいろんな事でムキになってたっていうのに…バトルをしているうちに心が熱くなりました」

「全くそうだな。………ふう。強くなったね、ジルチ。本当に強くなったよ。トレーナーの君が正しくて強い心を持てばポケモンもそれに応えてくれる。そうしてトレーナーもポケモンもどんどん強くなっていくんだ……」

「そうですね。この旅でいろんな事を体験して学んできました。その結果が今の私達です」

「そうだな。……俺の心配はいらなさそうだ。約束通り、君を保護する話は撤廃だ」

「……」

「もちろん嫁入りの話もだ。レッド、そんなに睨まないでよ」

3人で笑い合っていると破壊された扉の方から女の子の声が聞こえてきた。

「あー終わっちゃったあ!もー博士が遅いからですよう!」

「おおジルチちゃん!それにレッド。カントーの旅に出た振りじゃな!」

「オーキド博士!!」

「いやあ逞しくなった。レッドとグリーンと同じくポケモンリーグ制覇は本当に凄い事じゃ!君がポケモンへの信頼と愛情を忘れずにこつこつとやってきた結果が実ったのじゃよ。……シズクさんも喜んでるはずじゃ」

「……はい!」

お母さん……目標のリーグ制覇、出来たよ、と心の中で言った。

「いやあポケモン達も偉いぞ。ポケモンもトレーナーの事信じているから頑張れるのじゃ!ジルチちゃん、本当におめでとう!」

「じゃー新しいチャンピオンのインタビューですう」

「え、今ですか?」

いきなりマイクを向けられて驚いた。そういえばこのバトルを実況で放送されてたような…。

「……何だか騒がしくなってきたな……。ジルチちょっと!ついて来てくれないか」

ワタルさんは奥の部屋を指を指した。

「わ、わかりました!」

ふと、レッドの方を振り向くと静かに頷いてくれた。肩にいるピカチュウは喜んでパチパチと手を叩いていた。

「うん、いってらっしゃい。ここで待ってるから」

「わかった!いってくる!」

「あーインタビューまだですようー」

「あとでインタビューすればいいんじゃよ。まだ………あるんじゃろ?レッド」

「うん」

「?」

 ―殿堂入りの部屋

「……この部屋に入るのも久しぶりだな。ここはリーグチャンピオンの栄光を讃える為、激しい戦いを勝ち抜いたポケモン達を永遠に記録する場所なんだ!」

「…ここが……」

「今ここにポケモンへの優しさと信頼、自分への強さと厳しさ、大事な物を持った新しいリーグチャンピオンが生まれた!」

奥の機械が起動してモンスターボールを入れる所が開いた。

「さあジルチ!君と君のパートナーを記録しよう!」

「はい!!」

ボールをセットするとモニターに皆が映し出されて数々の情報が記録されていった。


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