水の都の巫女 | ナノ


チャンピオンとルネの民と護神(ダイゴ・ミクリ)

 ミクリが珍しくトクサネに遊びに来て、ボクの家でお茶会をしていた。ミクリ曰く、今日は水の音…波がいつもと違うらしい。

「嵐の前触れとかじゃないのか?」

「いや…少し違うな。自然がもたらすものではなく、誰かがやっているのだよ。トクサネで何か変わった事はなかったかい?」

「特に………あ、水ポケモンが少し騒がしいとゆうより賑やかな感じがしたかな」

「なるほど…」

ミクリはティーカップに紅茶を注いで角砂糖を1つ入れた。

「何か心当たりが?」

「ルネ周辺でラティアスとラティオスを見たと聞いてね。そのまま北東へ向かったらしい」

ルネ周辺から北東…トクサネかそのままカントー・ジョウト地方へ向かったのだろうと考えていた。

「今度仕事の関係でカントーへ行くから、その時2匹の目撃情報がなかったか調べてみるよ」

「あぁ、頼む。……おや、来客のようだ」

「え、来客?」

誰かが来るとは聞いてないし、ドアを叩いてもいないのに何故わかるのだろうと思った。

「…遠慮しないでドアをノックして入ればいいじゃないか、ラティオス」

「えっ!?」

ミクリの発言にボクが驚いているとドアをノックする音が2回して、扉が開いた。

「流石ルネの民、恐れ入ったよ。いつから気づいてた?」

「私がルネからトクサネを向かう時からだよ。ミロカロスがずっと空を気にしていたからね」

ラティオス…と思っていたらボクらと歳が変わらないくらいの青年が玄関に立っていた。

「やはりポケモンには気づかれてしまうね…。っと失礼、僕はラティオス…この姿ではサフィラス、と名乗っている者だ。そして水の都の護神でもある。初めまして、ホウエンのチャンピオンさん」

軽く頭を下げて彼はサフィラスと名乗った。何故人の姿をしているか気になった。

「この姿でいるのは君達と話しやすくする為さ。ホウエンで有名な2人がポケモンと話していたら大騒ぎだろ?」

「…確かにそうだね」

「ラティオス…いや、サフィラス。私達に何か用があるのだろう?」

「話が早くて助かるよ。君は僕らの事をどこまで知っている?」

「伝承ではルネのはるか南に水の民とラティオス達が暮らしている都があった。昔はルネの民や他の民と交流があったらしいが何世代前から途絶えたという事だ」

「そこまで知ってるなら充分だ。交流が途絶えた理由は外部の者が原因で水の都が滅んだからだ。その後、こころのしずくの力を使って都を封印したけど…その者達はまだ僕らの家族を狙っている。そこで君達に頼みがあるんだ」

「ルネの民として、聞こう」

「…ボクも聞こう」

ミクリの話に出た水の民の話はボクも知ってる。正直、幻のような存在としか思っていなかった。だけどサフィラスの顔を見ると深刻な様子だったから力になろうと思った。

「ありがとう。では、ダイゴ…君にはこれを身に離さず守って欲しい」

サフィラスは懐からガラスで出来たメダリオンを取り出した。

「それは水の都の場所に繋がる鍵、封印を解く鍵だ。2枚で1つの鍵になる」

「残りの1枚は?」

「僕の娘が持っている。いつかホウエンに来た時にそれを渡して欲しい」

「わかった。……娘?」

「あぁ、そうだね。…この子が僕の娘、ジルチだ」

サフィラスが見せてくれた写真にラクライを抱えた小さな女の子が写っていた。

「おや、可愛らしいお嬢さんじゃないか」

「だろ?シズクにそっくりで好奇心旺盛で結構バトルのセンスがあるんだ。そうそう、ミクリには儀式に使われている舞の歌を教える」

「日頃から口ずさんでリズムと音階もしっかり覚えなければ、な」

「その必要はないさ。単語ばかりで舞う人によって変わるから大丈夫」

「それなら安心だ」

サフィラスは目を閉じると舞の歌を歌い出した。

「―大いなる海よ 我ら水の民 水と共に生きる者なり 聖なる舞と 水の響きを捧げ 都の祝福と繁栄を願う」

サフィラスが目を開け、赤い瞳がミクリを見た。

「―とこんな感じだ。覚えれそう?」

「あぁ、問題ない」

「ところでサフィラス。君達を狙う者って何者なんだ?目的は知っているのかい?」

「…僕が知ってる事は奴らの本拠地はホウエンよりはるか遠くで、目的は世界征服、といったところだ。その為にポケモンの技を使える人の姿をした兵器を作ろうとしている」

「それは恐ろしい事だね…」

「奴らが諦めるか倒すまで僕らに未来はない…!」

サフィラスは両手に拳を作って怒りを抑えていた。

「……ジルチがホウエンに来て君達に会うまで、頼む。その2つを守ってくれ…!!」

「もちろん」

「しっかりと守るから頭を上げて?」

「ありがとう…!……っ!!」

サフィラスが何か気づいて後ろを振り向いた。その目は怒りと焦りが混じって見えた。

「サフィラス?」

「また、か。すまない、そろそろ行くよ」

「あぁ、何かあったらルネに来るといい」

「助かる、ルネの民よ。それじゃ、邪魔したよ」

玄関の扉を開けると彼の姿が消え、砂浜が風で少し舞った。


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