水の都の巫女 | ナノ


15

 帰宅して晩御飯を食べながら母にバトルの立ち回りを聞いていた。

「相性の悪いポケモンだと覚えている技次第で逆転はできるけどそれは相手も同じで油断しちゃダメよ?」

「わかった!」

「お父さんだったら努力値とか細かいこと言いそうだけど…お母さんはそこまでバトルしないから難しいわね」

「お父さんはこだわりすぎー。そういえばお父さんはまだホウエン地方でお仕事してるの?」

「えぇ…最近連絡がないけどホウエンから出てないと思うわ」

ジルチの父親は一緒にカントー地方に引っ越さず、1人でホウエンに残って仕事をしている。月に何回か手紙を送るくらいであまり連絡が取れていない。

「そういえばお父さんから貰ったお守り、ずっと身につけてる?」

「うん、ちゃんとつけてるよ!ほら」

ジルチは首から服の中に入れていたお守りを母に見せた。
波模様の透かし彫りのされた薄い円形で中央に青い水晶がはめ込まれていた。

「お父さんがずっと身につけてなさいって言ってたからお風呂の時以外つけてるよ!」

「そう、よかった。水の護神様の加護があるから大切にしなさいね?」

「うん!」

「お母さんは研究の続きをするから食べ終わった食器は流し台に入れるのよ?」

「はーい!」

「ごちそうさま。遅くまで起きてたらダメよ?」

「お母さんみたいに夜ふかしはしないよ!」

「ふふふ、母さんはお仕事だから仕方ないのよっ」

ジルチの母は研究に使っている部屋へ入って、机の上にあった手紙を読みながら小さく呟いた。

「………。あなた…私も頑張るから危ないことは避けなさいよ…」

その手紙は今日父親から届いたものだった。

[あの研究所にあった資料は全て燃やした。
研究所も使えないものにしたが研究員が外部に情報を持ち出しているかもしれない。
あと、奴らがまだ僕らを血眼になって探しているから気をつけろ。他の資料に対ポケモン捕獲を強化したものやポケモンの心を閉ざし、戦闘兵器にする技術を開発していた。
僕はまだ調べることがあるから各地を飛び回っているけど大丈夫だ。
いつも心配をかけてすまない、ジルチのことは頼んだ。ーサフィラスー]

父親の生存は確認取れているが危ない事ばかりしていて心配だった。
もちろんこの事はジルチには秘密にしていた。いずれ話さなくてはいけないと思っていても、まだ子供のジルチには衝撃がありすぎる。
しかし"仕事でホウエンに滞在している"とゆう嘘をついている事に後ろめたさを感じていた。

「…さて、オーキド博士に頼まれた研究をしなきゃね。でもカントーじゃ少し情報や知識が足りないわ…。ポケモンの卵に関してはジョウトで研究した方がいいかしら……」

ポケモンの卵について研究を頼まれているがジョウト地方で発見されたばかりであまり情報がない。
1番最初に発見したジョウトに行って確かめたいところだが、友達も出来て毎日楽しそうにしてるジルチにいきなりジョウトへ引っ越す提案を出すのは難しい。
かといって私1人ジョウトに行ってジルチをカントーで1人させるのは不安で仕方ない。

「困ったわね…でも、決めなくちゃどのみち進めないわ。オーキド博士には私達をかくまってくれた恩があるからね」

今ある研究資料を紙に書きながらジルチに近いうちジョウト地方へ引っ越す事を言う決意をした。


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