14
―セキチクジム
最後の1匹、ドラピオンを倒してアンズさんに勝利した。
「……!!つ、強いっ!」
「よし!やったね、ハクリュー!」
ハクリューは誇らしげに胸を張った。モルフォン、アリアドスはバクフーンのブラストバーン1発で倒して、あとはハクリューとバンギラスが活躍した。
「負けたよ、完璧に……。ワタルさんが本気で戦えって意味がよくわかったよ。ほら、これ持ってって!ピンクバッジよ!」
「一体ワタルさんは私の事を何て言ってるのですか……。ありがとうございます」
「何だったかな…。レッドに次ぐ強さを持った子が挑戦しに来るから気を抜かず、全力で戦えって。特別にこれあげるわ!時々、相手を毒状態にしてしまう技マシン84のどくづきよ!」
「なるほど……」
「ワタルはジルチの事をかなり警戒してるね」
バッチと技マシンをケースにしまい、鞄に入れた。
「イブキさんとのバトルを見て、私がもっと強くなってリーグに来る事を予想してるよね」
「リーグには四天王のキョウ、あたいの父上がいるからそう簡単にワタルさんの所へは行かせないよ!」
「アンズさんのお父さんが四天王!?」
「そうよ!そして父上が世界で1番ポケモンの扱いが上手なのだから!」
「おぉー!」
親子で四天王とジムリーダーとは誇らしいものだと思った。アンズさんがお父さんを尊敬してて、晩御飯を届けに行ってる話を聞いて少し羨ましかった。
セキチクジムを出て、南方面最後のグレンジムを目指した。リザードンの背中に乗りながら下に広がる青い海を眺めた。
「…ジルチ、リーグ制覇したらホウエン地方に行くんだよね?」
「そうだよ?」
「僕もついていっていいかな?」
「え…来てくれるの?」
レッドがホウエンについて来てくれるのはとても嬉しかったけど、どうして今その話題が出たのか疑問だった。
「アンズの話を聞いてて…僕も少し羨ましかったんだ。僕の父さんも旅に出たっきりで連絡がないんだ」
「そうだったの?」
レッドのお父さんに関する話題が出たのが実は初めてで、その事を知らなかった。
「うん。あの時のジルチの気持ちはわかるよ。だから…僕に出来ることをさせて?」
そう言うと後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「……ありがとう」
私の背中をそのままレッドに預けて、心地いい風に当たりながら心が幸せに満ち溢れた。
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