13
翌日、ポケセンを出てレッドがリザードンを出すと青年に声をかけられた。
「やぁ、ボクはダイゴ。昨日の君達のバトルを見させてもらったよ。2人はかなりの実力を持ってるようだね。……それにいい目をしている」
「軽くバトルするつもりでしたが夢中になっちゃいまして…」
「ジルチと戦うと熱くなるんだよね」
「負けたくないもんね」
「そういうのいいよね。ところで君達はラティオスというポケモンの噂を耳にした事ないかい?ホウエン地方に生息するラティオスが何故、土地を離れてカントー地方へやって来たのか。それを調べているんだよ」
「ラティオスが!?それ、いつ来たのか知ってますかっ?」
「正確な時間はわからないけど結構前に目撃情報があったんだ。あとラティアスも目撃情報があってね。そっちは1年前の事だ」
ラティオス…同じラティオスとは限らないけど、お父さんがカントー地方に来ていた。そしてラティアスも関係している可能性がある。
「ラティオス達はこころのしずくという宝石のような玉と深い繋がりのあるポケモン。そのラティオス達がカントーに現れたという事は、もしかしたらこころのしずくが関係しているのかも……」
「こころのしずく…」
「ラティオス達は広い範囲を移動するポケモンだ。追跡する機会がないとなかなか出会えないと思うけど、君達もトレーナーなら興味があるんじゃないか?」
「そうですね。ありがとうございます」
「じゃあボクはこれで。またどこかで会うかもしれないね」
ダイゴさんはエアームドに乗って空高く飛んでいった。
「ラティオスってジルチのお父さん、だよね?」
「…うん。でも同じラティオスとは限らないけどね。じゃ、セキチクへ向かおう!」
「そうだね」
リザードンに乗り、レッドの背中に抱きつきながら青い空を見上げた。
「……(お父さん、元気かな)」
首からかけているお守りをそっと触れた。
ホウエン地方・南の孤島
「はぁ……。また封印をこじ開けようと侵入してきた者がいるなぁ」
少しの間、妹のラティアスとホウエンを飛び回っていて帰ってきたら何者かが侵入した痕跡があった。石碑にヒビが入っている所を指でなぞった。
「ただ石碑を壊しても都の封印は解けない。だけど時間稼ぎにしか過ぎない」
石碑から指を離すとヒビがなくなり、綺麗になっていた。
「侵入の回数が確実に増えてきてる。…この石碑もあまり長く持たないかもしれないな」
次の対策を考えねばと思っているとラティアスが心配そうな顔をしていた。
「ん?あぁ…僕は大丈夫。封印の維持を出来るくらいの体力は残してるよ。……え?僕だけじゃなくてジルチの事も心配だって?」
妻のシズクが亡くなり、娘のジルチは1人で旅に出ているとラティアスから聞いた。シズクが亡くなったと知ったのは持っていた結晶が砕け散った時だった。胸が裂けそうな気持ちでいっぱいになり、人を憎みそうになった。ラティアスや水ポケモン達に励まされて何とか立ち直った。
「そうだね。あの子は強いと言っても女の子だし…。もしもの事があればワタルが助けてくれるはずだ。本当は僕らが迎えに行けたら行ってるけど……」
封印された水の都への道筋となる石碑を見つめた。
「奴らがここに気づいた以上、石碑を守らないといけないからあまり遠くへは動けない」
この石碑と都の封印を解くには2つで1つの鍵になるメダリオンと僕が持っているこころのしずくが必要だ。
「ジルチがダイゴからもう片方のメダリオンを受け取り、ここに来てくれるはずだ。それまでの辛抱だ」
ラティアスの頭をそっと撫でて励ました。
「だからジルチがホウエンに来たらよろしく頼むよ」
ラティアスは頷いて石碑の周りを飛び回った。
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