34
翌朝、目が覚めるとレッドの顔が目の前にあって心臓がドキっとした。
「(…そっか、レッドと一緒のベッドで寝たんだった)」
「すぅー……すぅー……」
「(意外と睫毛が長い?)」
まじまじとレッドの寝顔を見てて少し半開きになってる口元を見た。
「(…寝てるから、いいよね)」
少し恥ずかしいけど寝ているレッドの唇に軽く触れる程度の口づけをした。起きないか気になったけど…眠ったままでホッとしていた。
「んー……」
「!!」
レッドは少し唸ると私を抱き枕のように抱きしめて、足まで絡めてきたから動けなくなった。
「(あれ、もしかして起きてる?)」
寝相は悪くないはずだしここまで動いたのは初めて見たというか体験をして少し困惑した。
「ジルチちゃーん!レッドくーん!朝御飯出来たから起きてー!!」
下の階からウツギ博士の奥さんの声が聞こえた。しばらく経っても降りてこなかったら起こしに来るかもしれない。そうなるとこの状況を見られるのは気まずい。別にやましいことはしてない、うん。
とりあえず起こそうとレッドの胸元をぽんぽんと叩きながら声をかけた。
「レ、レッド、起きて。朝だよ?」
「んぅー…」
起きる様子がない、それどころか強く抱きしめられた。
「レッド!」
「………だって恥ずかしがり屋のジルチがキスしてきたもん。寝たふりしてたら次はどうするのか…気になるじゃん」
「っ!?」
いつから起きてたのかは知らないけどレッドは起きてた。抱きしめる前まで閉じていた目は開いて、黒い瞳がぱっちりと私を見つめていた。
「いつから…起きてたの?」
「秘密」
「えーっ」
秘密とゆう事は結構前から起きてた可能性がある。ふと、抱きしめられた状態から解放されると頬を触れられた。
「ジルチ」
「んっ」
ちゅっと音がしてからようやくレッドが起き上がった。
「朝御飯、食べに降りようか」
「…うんっ!」
ベッドから降りて、机に置いてたリボンで軽く髪をまとめた。
「そのリボン…」
「ん?あぁ…レッドが水の石をプレゼントしてくれた時の箱に結んでたリボンだよ。ジョウトへ向かってる時に手首に巻いてたけどお母さんが髪に結んだら?って言われてからずっと結んでたの。この赤いリボンを付けているとレッドが近くにいるような気がしてね」
「それは嬉しいな。今はすぐ隣にいるけどね」
「ふふっそうだね」
部屋のドアを開けて下に降りるとウツギ博士の奥さんがコーヒーを淹れてくれた。
「おはようジルチちゃん、レッド君。よく眠れたかしら?」
「おはようございます。久しぶりのベッドだったので熟睡しました」
「僕も」
「久しぶりってポケセンで泊まってないのかい?」
席について美味しそうな目玉焼きを見ているとお腹がすいてきた。シロガネ山ではインスタント系の食べ物を食べて過ごしていたから昨日のカレーといい、手作り料理を食べると凄く心とお腹が満たされた。
「フスベジムの前に数ヶ月ほどレッドと一緒にシロガネ山に籠って修行してたので地面で寝てました」
「僕はジルチと会う前は数年籠ってた」
レッドの数年と聞いたとき、ウツギ博士がお箸を落としかけていた。
「熱心なのはいいけど身体は大切にしなよ……」
「研究熱心なあなたもね!」
「あはは…」
ウツギ博士も研究に集中すると食事を疎かにするときがあった。やっぱり何かに集中したり熱心になると何かが疎かになるのは仕方ないと思った。
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