12
ぼくはいつからジルチの事が好きになったのか、もしかしたらあの日助けてもらった時に一目惚れしてたのかもしれない。
だけどこの想いに意識したのはつい最近のこと。だから今日のように2人で遊びたかった。
そういえばぼくは10歳になったらポケモンもらって、チャンピオン目指して旅に出るけどジルチはどうするんだろ?ぼくと一緒に旅に出れたらいいな、でもグリーンと同じように競い合いたい。
この想い、ジルチに伝えたい…でも今じゃない。
ぼくがひたすら考え事をしていたらいつの間にか日が沈みかかっていた。
そろそろ帰らなきゃいけない時間だと思って、まだ気持ち良さそうにお昼寝をしているジルチを起こす事にした。
「ジルチ、もうそろそろ時間だよ」
ジルチの肩を揺さぶってると寝ぼけた顔がぼくを見上げた。
「ん…レッド、くん………?……はっ!わたし寝ちゃってた!?」
バッと飛び起きて目が覚めたようだ。いきなりジルチが飛び起きたからピカチュウたちも何事かと思い、飛び起きた。
「うん、寝転がったあとすぐに」
「ごごご、ごめんっ!レッドくんと遊んでるのに寝ちゃった!!」
「いいよ、気持ち良さそうに寝てるジルチの寝顔見れたし」
少し意地悪っぽく言うとジルチは顔を真っ赤にして手で隠した。
「うわぁあっ!恥ずかしい!」
「そんな恥ずかしい?」
「もちろんっ」
ジルチがそっぽ向くと膝にあるぼくの上着に気づいた。
「…これ、レッドくんがかけてくれたの?」
「そうだよ」
「レッドくん…ありがとう」
まだ少し頬が赤いけどこっちを向いて上着を渡してくれた。受け取った上着を着てぼくは立ち上がった。
「どういたしまして。帰ろっか」
座っているジルチに手を差し伸べた。
「うん!帰ろう」
ジルチは笑顔でぼくの手を取ってくれた。
「ばいばい!ピカチュウー!」
「また今度」
『ピッピカチュウ!!』
ぼくらはピカチュウたちと別れたあとオーキド博士にお礼を言って研究所を後にした。
「家まで送るよ」
「え、いいの?レッドくん帰る時間遅くなっちゃうよ?」
「ぼくは大丈夫」
家まで送りたいのは本当。だけど少しでも長く手を繋ぎたかったのもある。
「本当にありがとう」
「いいよ。それに今日誘ってくれてありがとう」
「えへへっ嬉しいな」
ジルチの家は研究所の隣だけど少し距離はあった。ようやく着いた頃には空は茜色になっていた。
「送ってくれてありがとう!夕方になっちゃったけど本当に大丈夫?」
少し名残惜しいけど繋いでた手を離した。
「うん、ここからならそんな遠くないから大丈夫。心配しないで」
「そっか…また遊ぼうね!ばいばい、レッドくん」
「またね、ジルチ」
ジルチは家の扉を開けて中へ入っていった。
見届けたあと、繋いでた方の手をグッと握りしめて家の方角へ歩いていった。
今日は本当にいい日だった。帰ったら母さんに何か話そうかな。
空を見上げると一番星が輝いていた。
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