水の都の巫女 | ナノ


23

 コガネに着くと街中にロケット団の姿がちらほらいた。私達は問題が起こったラジオ塔へ向かった。

「ジルチ、確か姿隠せたよね?」

「そうだけど…どうして?」

「幹部を倒すまで僕の後ろで姿を消してついて来てほしい。そうすればジルチは安全のはずだから」

「私も戦う!」

「ダメだ!!出来るだけジルチにはあいつらの前で戦ってほしくないっ」

レッドに怒られるとは思わなくて走りながら黙ってしまった。

「…怒鳴って、ごめん」

「レッドの気持ちはわかるからいいよ。だけど1人では戦わせない」

私は1つのボールを投げた。

「シャワーズも一緒に戦わせて。指示はレッドに任せるから」

「…わかった。あれがラジオ塔だね?」

「うん!じゃあ姿を消すね」

私は周りに人がいない隙に能力を全開に出して姿を消した。

「もう1度ロケット団を…潰す!」

レッドはラジオ塔の入口に立っていたしたっぱをあっという間に倒して私達は中へ入った。

 ーラジオ塔
ソウルは幹部から借りた資料を読みながら椅子に座っていた。

「……(これがあいつの正体か…。ロケット団が狙うのも頷ける。親父が言ってた通り、手に入ればロケット団は最強になるだろうな)」

資料にはジルチや両親の事、情報提供者が書かれていた。手元にはサーモグラフィーの機能が搭載された道具があった。どうやらしたっぱに捕まえさせる場合に使うようで、ジルチは普通の人間より体温が低いからこれで判別しろという事らしい。

「馬鹿馬鹿しい。こんな機械であいつが見つかるわけ……」

試しにラジオ塔の外を手元にある道具で覗いてみると、入口に周りの人より体温が低い翼が生えた人が映った。慌てて機械を外して同じ場所を見るその姿はなかった。

「おいぉぃ…まさかあいつここに来たのか?」

まさかと思いつつ、資料と道具を持って下の階に降りた。

 ーラジオ塔・2階
レッドのピカチュウと私のシャワーズがしたっぱを片づけつつ、幹部がいると思われる上の階を目指していた。

「…(そういえばここの局長大丈夫かな…)」

そう思いつつ3階への階段を目指していると見慣れた赤髪が壁にもたれていた。
レッドは無視して階段を上がろうとするとソウルが動き出した。

「おいジルチ、姿を消しても無駄だぜ?」

そのセリフにレッドは足を止めた。もちろん私もそのセリフを聞いてソウルに振り向いた。

「っ!?(姿が見えていないはずなのに…!)」

「これでお前の手と帽子の身体、見てみろよ」

ソウルは持っていた道具を私に投げた。端から見たら道具が空中に浮いてるように見えるだろう。ソウルに言われた通り、受け取った道具で自分の手とレッドを見ると体温が違うのがわかった。

「私の方が…体温が、低い?」

「多分幹部達はジルチがここにいるの気づいてるんじゃねぇか?」

「……どうしてソウルがここにいる?」

姿を現してソウルに道具を投げ返した。

「野暮用だ。それとこれをやる」

何かの資料の束を渡してきてパラパラと内容を見ると私の事や両親の事、情報提供者といった内容が書かれていた。

「な…!」

「最初は信じられなかったが昔、ある奴がお前ら一族を手に入ればロケット団は最強になるとかほざいてたのを思い出した。ロケット団の中ではお前の事は極秘らしく、一部の幹部しか知らないし、その資料のコピーはない」

「何故そこまで知っている。お前は何者だ」

レッドがソウルを警戒して私の前に出た。

「何者でもない。弱虫が集って人に迷惑かけているのが目障りだから潰しに来ただけだ。今回は見逃してやる、さっさと上の階に行け」

「…資料、ありがとう。これで悪の根元を探し出して潰せる」

「ふん!せいぜい頑張るんだな」

ソウルは道具をへし折って床に捨ててからその場を去った。

「悪い奴なのかそうじゃないのかわからない…」

「ソウルは…生意気で態度は悪いけど根っからの悪じゃなさそうだね。…姿を消しても意味がなさそうだし、先を急ごう」

資料を鞄に入れて3階へ上がった。


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