水の都の巫女 | ナノ


14

 翌朝、耳元で土を掘り返すような音がして目が覚めた。

「ん……レッド、土…掘ってるの?」

寝ぼけながらレッドに聞くと返事がなく、隣を見るとレッドはまだ眠っていた。

「…あれ?」

確かに土を掘り返すような音が聞こえた。でも周りに掘られた感じもなければ掘ってる人物もいない。

「気のせいだったのかな…。レッドはまだ寝てるしもう一眠り……」

枕代わりのタオルに頭を乗せるとやはり土を掘り返すような音が聞こえた。

「……やっぱり気のせいじゃない。下から掘り返してる?」

タオルを退けてしばらく地面を見てると土が盛り上がってきた。何が出てくるのかと思いきや緑色の角が見えた。

「ん?まさか……」

ゆっくりと土の中から出てきたのはヨーギラスだった。土の中から出てきたばかりで周りを見渡していると私と目が合った。

『ヨー』

「ヨー……」

『ヨォォーッ!!』

「ヨーギラスだっ!ぐはぁっ!!」

私と目が合ったヨーギラスは土から勢いよく出てきて私のお腹に体当たりをした。こんな小さな身体なのに重量感があって私は尻餅をついた。

「ジルチっ!?」

私の声でレッドが飛び起きた。

「あぁ…レッドおはよう」

私は太ももに乗っかっているヨーギラスが重すぎて、私の力じゃ持ち上げれなかったから念力で浮かして足元に降ろした。

「ヨーギラス?つかまえたの?」

「いや、違うよ?さっき土の中から出てきて…目が合ったら体当たりをされたの」

「土の中から…生まれたばかりのヨーギラスだね。ジルチの事、親だと思ってるんじゃないかな?」

ヨーギラスは私の足元にすり寄ってきて甘えてきたから頭を撫でてあげた。

「親って……」

「…なついてそうだしボールに入れたら?」

「この子次第かな……。ヨーギラス、私と旅する?」

空のモンスターボールをヨーギラスに見せると…ボールを受け取って食べようとした。

「ちょっと待って!?ヨーギラス!それ食べ物じゃないから!」

『ヨー…』

「うっ……そんな悲しい顔をしないで欲しいな…。お腹空いてるならこれあげる」

私はポケットに入れてた食べかけの携帯食料をヨーギラスに渡した。

「それポケモンも食べていいんだ?」

「うん。フレンドリィショップにポケモンと一緒に食べれる栄養食が売ってたの。…味が薄いけどね」

ヨーギラスは美味しそうに食べて満足げな顔をした。

「ヨーギラス、もう1度聞くけど私と旅する?」

今度は理解してくれてヨーギラスは何度も頷いた。

「決まりだね!この食べようとしたモンスターボールに入ってくれる?」

『ヨー!』

元気な声で返事をしてくれたからボールを軽く角に当ててヨーギラスはモンスターボールの中へ入っていった。

「よかったね。ここで育ててバンギラスまで進化させる?」

「そうする!中々スパルタになるかもしれないけど私もその分頑張るよ」

新たに仲間になったヨーギラスのボールを握りしめた。腰にある手持ちのボールがカタカタと揺れてみんな喜んでいた。

「それじゃ、初戦の相手はリングマだね」

「へ?」

レッドが指差した先を見ると洞窟の入口からリングマがやってきた。私達を見つけるとリングマは殺気を出した。

「おぉと…これはこれは」

生まれたばかりのヨーギラスで大丈夫だろうかと思いながらボールを投げた。

『ヨー!』

「うん、ヨーギラス頑張ろっか!!」

要は攻撃が当たらないように地道にダメージを与えればいい。ヨーギラスとリングマの動きをしっかり見なくちゃいけないから集中力がいる。
レッドが後ろで見守りながらヨーギラスの初陣を見届けていた。

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