水の都の巫女 | ナノ


鳥と幽霊の宅配便(ハヤト・マツバ)

 ―エンジュシティ
僕はジルチちゃんが赤黒い何かに飲まれてしまう光景を千里眼で見た。その事がずっと気になっていると最近になってまたジルチちゃんの事が見えた。
ワタルさん、ヒビキ君、トキワのグリーン君が一緒にいて赤い帽子を被った少年が傷だらけのジルチちゃんを抱えてフスベシティに向かう光景だった。

「事は最悪な方向にならなかったとはいえ、ジルチちゃん大丈夫かな…。炎の加護があっても僕は心配だよ」

『ゲゲーン!』

ゲンガーがいきなり襖を開けたと思ったらハヤトが来た。

「邪魔するよ。マツバ、頼まれたリンゴを持ってきたがどうする気だ?」

「ありがとう。フスベにいるジルチちゃんに送ろうと思ってね。ハヤトも手紙を書くか?」

「もうフスベに……いや、チョウジタウンの件はどうなったんだ?ジルチは大丈夫だったのか?」

流石、ジルチちゃんのお兄ちゃん代表。チョウジタウンを避けてフスベシティに向かったとは思わなかったか。

「炎の加護のおかげで一命を取り留めた感じかな。それとリンゴを届ける為にピジョットを貸してくれないか?」

「一命を取り留めたってまた無茶をしたのか!?」

「無茶をさせられた、が正しいよ。あの子は罠にハメられたようなもんだから。はい、紙と筆」

ハヤトは少し唸りながら紙と筆を受け取って手紙を書いてくれた。
あの様子だと今度ジルチちゃんに会ったら説教しそうだ。

「ありがとう。じゃあゲンガー、ピジョットよろしく頼むよ」

『ゲン!』『ポー!』

ゲンガーにリンゴと手紙を入れたかごを渡してゲンガーはピジョットに乗った。

「気をつけていくんだよー」

あ、ゲンガーにリンゴをつまみ食いしないようにって言うのを忘れた。

「…マツバ、これからのジルチは大丈夫なのか?」

「んー彼がいるから大丈夫じゃないかな?」

「彼?」

赤い帽子を被った少年、彼がそばにいる間は大丈夫と思う。
ジルチちゃんの旅路に光がありますように。

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