02
闇の中、冷たくもない、暖かくもない世界を1人でさ迷っていた。
名前しかわからない、何故ここにいるかもわからない。途方にくれそうになった時、光が見えた。
「これは…何?」
近づいてみると小さな炎が静かに浮いていた。触れたら熱いのだろうか?と思いながら触れるとほのかに暖かい。
「何だか懐かしい感じがする…何でだろう?」
しばらく触れていると炎が揺らめき、何かを写し出した。そこには私と誰かがいてポケモンと一緒に笑っていた。
「あれ…誰だろ……知ってるはずなのに…」
すると頭の中に声が聞こえた。
(君の名前は?―僕はレッド)
「レッド…?」
その名前、聞き覚えがある。レッド…マサラタウン…ピカチュウ……旅。
名前を聞いた途端、何かを思い出すかのように単語が出てくる。
「約束…リーグでまた会おう」
空っぽだった私の中の何かが色鮮やかになっていく。
(ぼくがジムのバッチ8こ集めてリーグに挑戦して、チャンピオンになったら…)
夕陽のあの場所で。
(ぼくと付き合って)
想いを寄せていた彼に告白された。
「レッド!!」
レッドの事を思い出すと炎は光輝いて周りの闇を払うかのように広がった。白く、明るい世界になって今まで旅をした出来事を思い出した。
「そうだ…!!私は…旅をしていた!リーグ制覇するために!レッド達とまた会うために!そしてお父さんが探している組織を見つける、あいつらに…ロケット団に負けてたまるかぁあっ!!」
炎は私の声を応えるように強く燃え、私を包んだ。左手に、懐かしい温もりを感じながら目を閉じた。
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