水の都の巫女 | ナノ


01

 ―フスベシティ・ポケセン
ジルチは治療を終えてから病室のベッドで3日ぐらい眠っている。僕はジルチの左手を握って目が覚めるのを待ち続けていた。

「こんこーん…ってレッド、お前ちゃんと寝てるのか?」

肩にジルチのイーブイを乗せたグリーンがリンゴの入ったかごを持って入ってきた。

「よいっしょ、と。…もう3日目だな」

グリーンが椅子を引っ張り出して隣に座った。

「うん…でも少しずつ回復してる。僕が旅の話をしたら手がちょっと動いたり表情が柔らかくなった気がする………」

「そうか。ジルチが目が覚めたらまず何するんだ?」

「…………」

「レッド?」

「……。すぅー…」

返事がないと思ったらレッドは座りながら寝落ちていた。

「3日間寝てなかったらそうなるよな。…ブランケットでも掛けてやるか」

病室の引き出しにあるブランケットを取り出してレッドの肩に掛けた。

『ブィー』

「ジルチが心配か?」

イーブイは耳を垂らして頷いた。

「ジョーイさんの話じゃ呼吸が安定して身体に異常はないから体力が戻ったら目が覚めると思うって言ってたから大丈夫さ。さてと、飯でも食いに行くか…ピカチュウも来いよ」

『ピカ!』

リンゴのかごをベッドの横の机に置いてピカチュウを連れて病室を出た。

「あのリンゴを渡してきたゲンガーとピジョット…誰かの手持ちだった気がするけど誰だったか忘れちまったな」

仲良さげな2匹だったからその持ち主のトレーナー同士仲がいいってのがわかる。
あの2匹はカントーのジムリーダーの手持ちに心当たりがない。そうなるとジョウトのジムリーダーかトレーナーかもしれない。

「かごの中にジルチ宛の手紙入ってたしジルチの知り合いだろうな」

飯食ったらまたジルチの様子を見に行こうと考えていたらピカチュウが頭の上に乗ってきた。

「ちょ、お前なぁ…」

『ピーカー!』

「早く食堂へ向かえって?…わかった!わかったから人の頭の上で10万ボルトを出そうとするなっ!!」

野生のピカチュウなら笑っていられるが生憎、頭の上にいるのはレッドのピカチュウだ。正直、笑えない。

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