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グリーンがヒビキ君と一緒にいることに驚いた。私が捕まったのを知っているのはヒビキ君ぐらいだと思っていたから。モニターを見ていると3人は合流して何らかの装置がある部屋に入った。
「チャンピオンのワタルにトキワジムリーダーのグリーン、貴女のイーブイと一緒にいる子供はヒビキ…でしたか?おや、彼は貴女の荷物を見つけていたのですね」
ワタル…確かお母さんの手紙にその名前があった気がする。同一人物かは知らないけどチャンピオンならグリーンの知り合いでもおかしくない。しかし2人とヒビキ君との接点がわからない。偶然この辺りで会ったのだろうか…。
考え事をしていると気づいたらランスが目の前にいた。
「遅かれ早かれ貴女を助けにここへ来るでしょう。ですがその前に…貴女には黒に染まってロケット団の道具になってもらいますよ!」
いきなり注射器を二の腕に刺され、一気に薬品を注入された。
「痛っ…!!」
「さぁて、どうなるか楽しみですねぇ…。結果次第じゃあたっぷり可愛がってあげますよ、ジルチ」
「何を言って……うっ!!」
何かモヤモヤとしたものが身体の中に渦巻きだして急に息苦しくなった。
「はぁ…はぁっ…」
突然の事で困惑していると頭の中で今までの出来事が走馬灯のように流れ出した。
―君の名前は?―オレはグリーン!―潔く地に降りるよ
―それを持っていろ―アイアンテール!
その出来事が流れたと思えば黒く塗り潰されていって、記憶が抜け落ちるような感覚に陥った。
(やめ、て…)
―レッド、てめぇ!―ゲゲン!!―いいか?無茶はするな
―ハヤト兄ちゃんが心配しちゃうからね―わはははっ!
「う、うわぁぁあっ!!」
―お母さん安心したわ―まだ泣くんじゃねーぞ?泣くのは再会のバトルでオレに負けたときだ!
(大切な、思い出を…塗りつぶさないで…!!)
―ジルチのこと好きだから
「レッド…助け、て…!!」
全てを黒く塗り潰された瞬間、意識が途切れた。
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