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ルギアが滝から出てきた瞬間、ただらなぬプレッシャーのせいで身体が動かなかった。
『ん?お前からホウオウの気配がする。それに水に縁がありそうだな?』
「ホウオウから聖なる炎の加護を授かったからで…水に関しては私が水の都の一族だからだと思う」
プレッシャーに耐えながらなんとか説明できた。
『聖なる炎、か。水の都?……あぁ!スイクンがよく足を運んでいた遠方の都か。しかしあの都は滅んでしまったと聞いたが?血縁の者は?』
ルギアからのプレッシャーが消え、身体が動くようになったけど次は質問攻めをされた。
「私が産まれる前に滅んでしまったようで…家族はお父さんしかいない」
正直、幼い頃に別れたっきりで生きているかどうかわからない。
ライボルトも面識があっても10年くらい前だからかなりうろ覚えになっているだろう。
『そうか。結構前にスイクンが水の一族の娘に会えたと喜んでいた。スイクンはあの都を気に入っててよく都の話をしてくれた。ここに来るよう仕向けたのはホウオウか?』
「スイクンがそんなに喜んでたなんて知らなかった。ホウオウが海の神と呼ばれるルギアに会ってみるのもいいでしょうって言われた」
『なるほど。スイクンにその都に一緒に行こうと誘われた翌年に滅んだから結構気にしていた。それは水の一族であるお前に水の加護を授けろって意味だな。ちょっと待ってろ』
ルギアが滝の中へ戻っていった。
スイクンが水の都を気に入ってて、ルギアを誘っていたことに驚いた。
ここが安全な場所でルギアの警戒が解けたのがわかったからライボルトをボールに戻した。
『待たせたな。それを持っていろ』
滝から出てきたルギアは口にくわえていた物を投げてきた。
「おっとっと…これは鈴?」
青い紐がついた半透明の鈴を渡された。
『私の力が込められた鈴だ。お守りのようなもんだと思ってくれ』
「ありがとう、ルギア!あ、そろそろタンバに向かうね」
私は鈴を腰のベルトに付けて歩く度に心休まる音色が響いた。
『行くのか。そう言えば名前を聞いてなかったな』
「ジルチ!スイクンは私のことを巫女って呼んでる」
『スイクンらしいな』
「私は巫女と呼ばれてもその実感がないけどね」
いまだに巫女と言われてもピンとこないし後継ぎだとしても話を聞いてる限りじゃお母さんではなく祖母の代で途絶えてる。その辺りはお父さんに会って話を聞く以外わからない。
『タンバへ向かうのはいいが嵐が来るから早めに動いた方がいい』
「そうなんだ!教えてくれてありがとう!!またねっ」
地面に置いてたランプを持ってルギアと別れた。
ジルチがその場を走り去ったのを見てルギアはふっと笑った。
『…スイクンが言ってた通り、元気な娘だな。たまには海底から出てみるか』
ルギアは滝の中から水上へ繋がる道へ潜った。
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