ハナナ日和@




「華魅ちゃん!華魅ちゃん!」


「あー?」


とある午後の昼下がり。
柔らかい陽射しを受ける家の庭を眺めながらウトウトとしている翔天馬 華魅のもとに、ナナ・スカーレットは笑顔でやって来た。


「何してるの?昼寝だなんて哀れで惨めで無様だね!」


「もはや悪口を越えてる挨拶をどうもありがとう。で、何の用だ?」


日常茶飯事となったナナの悪態をさらりとかわし、華魅は聞いた。
ナナは自分の家の如く勝手に居間と廊下を分ける障子を開けると座布団の上にドカリと座った。


「華魅ちゃん。まずはお茶でも出せよ。」


「え、訪ねといて命令型?ナナさんさすがにそりゃねえよ。」


「ウルセーヨ。」


「…………」


もはや何を言っても悪態が返ってくる。
仕方なく華魅は立ち上がり、台所でお茶を作ると、ナナのもとへ持って行った。


「ほらよ。」


「まずいな。」


「飲んでから言え。」


「さて、本題に入ろうか!」


「全く……何の用なんだよ。」


結局出されたお茶に口を付けず話始めたナナに、華魅は溜息をつきながら机を挟んでナナの前へと座った。


「もしみんなをゴレンジャーに例えたらどうなるかなぁって!」


「素晴らしく無駄な話だな。」


「あぅあ!華魅ちゃん酷いよ!」


「人ん家押しかけてお茶を出させてまで話す事じゃないだろ。」


「そんなこと言ってるからボケちゃうんだよ屑。」


「ちゃっかり屑とか言ってんじゃねぇ!」


「じゃ、聞いてくれるよね♪」


「はいはい、わかったよ。で、何だって?」


「ゴレンジャーだよ!」


「ゴレンジャーね。あれは5人のレンジャーだぜ?わかってる?」


「わかってるよ!ピッタシ!」


「ナナ…あたしはお前は数ぐらい数えられると思ってたよ…」


「?」


「だから、あたし達は7人いるだろ?」


「華魅ちゃん何言ってるの?」


「いや、普通に数の話だが…」


「華魅ちゃんがゴレンジャーに入れる訳無いじゃーん☆」


「じゃあ何であたしに話すんだよ…」


華魅は本日数度目の溜息をついた。


「華魅ちゃんはいつも暇だから!」


「…悪かったな。」


「別に。どーでもいいよ!」


「…………そうかよ。」


「でもね、華魅ちゃんにもちゃんと役があるんだよ!」


「…………」


どうせまともな役ではないだろうが、聞くだけ聞こうと思い、華魅は無言の相槌をうつ。


「その名も!『魔神鼻毛チョット出テる!』」


「明らかに弱そうだな。」


「魔神と鼻毛の間をちょっと空けて読むのがポイントだよ!」


「だから何だ。」


「鼻毛鼻毛鼻毛〜」


「女の子がそんな言葉連呼すんな。」


「華魅ちゃん!役貰えただけでも感謝してよ!」


「どうも。」


「ありがとうは?」


「全然感謝出来ねえけどな。ありがとうごぜーました。」


「どういたしまして!」


「しかしな、ナナさん。まだ人員オーバーなんだぜ。ナユタがきたからな。」


「フッフッフッ!実はナユタくんもゴレンジャーじゃないんだよ !」


「ナユタも悪の組織か。ひでーな新人いじめじゃねーか。」


華魅は顔をしかめてナナを見た。
一方のナナは首を横に振った。


「華魅ちゃんと同類だなんて人権損害だよ!」


「あたしはいいのか。」


「自惚れちゃダメだよ華魅ちゃん!」


「………コノヤロウ」


「カルシウムが必要かな?」


「……もういい。で、ナユタは何役なんだ?」


「被害者さんだよ!」


「へぇ〜。普通だな。」


「華魅ちゃん魔神鼻毛チョット出テるにさらわれて僕達正義のゴレンジャーに助けられる農民の子だよ!」


「今の時代に農民!?だいたいお前らが正義なわけないだろうが!今の文章にはかなりツッコミ所があるぞ!」


「うざったいな♪」


「あーそーかよ!ってゆうか、被害者じゃあんまし出番ないじゃねーか。」


「大丈夫だよ!毎回被害者はナユタくんだから。」


「それはつまりゴレンジャーがいくら助けてもさらわれるということか?」


「うん。ガードが甘いんじゃないかな!」


「もはやただの足手まといだぞそれじゃあ。」


「華魅ちゃんってば酷いな〜。ちなみに最終回ではゴレンジャーがナユタくんを見捨てて終わりだよ!」


「酷いのはどっちだ!」


「ゴレンジャーはねー…まずリーダーのレッドがアクアでしょ?」


「ま、そーだろうな。」


「グリーンが雛魅ちゃんかな!」


「ヒーとあたしは双子だぞ?」


「雛魅ちゃんは鼻毛がちょっと出てる姉に嫌気がさして家を飛び出して来ちゃったっていう設定なの!」


「どんだけ嫌なんだよ。ヒーは潔癖症じゃないんだぞ。」


「ブルーは李雨ちゃん!」


「見かけがそうだしな。というとラムはイエローか?」


「その通り!」


「へぇ〜、じゃあお前はピンクなわけか。」


「………華魅ちゃんは頭固いなぁ。」


「あ?違うのか。」


「ここはワインレッドだよ!」


「いやいやいや、レッドだよそれ被ってるから!」


「華魅ちゃんは色の識別が出来ないの!?精神科行ってきてよ!」


「精神科じゃないと思うがな…………。大体聞かないだろワインレッドレンジャーなんて。」


「はミュー…華魅ちゃんは夢がないよぅ…」


「近頃のちびっ子の夢に酒の名前が入ってちゃまずいだろ?」


「あぁ!それもそうだね!じゃあ僕はスカーレットにする!ほら、自分の名前だし!」


「浮かばねーよ!いきなりスカーレットレンジャーとか言われても何色かわかんねーから!」


「平気だよ!衣装の色だし!」


「遠くから見たらぜってぇレッドとの違いがわからないと思うがな。」


「いちいちうるさいなぁ華魅ちゃんは!」


「静かにしてほしけりゃそのツッコミ所満載の文章を直せよな。」


「そんなことしなくても首を絞めれば静かになるよ?」


「それは殺人って言うんだよ!ほら、話終わっただろ、行った行った!」


華魅はシッシとナナに向けて手を振った。


「む、もうこんな時間かぁ。あっ!近所の男の子達と野球する約束してたんだった!」


「へー。頑張ってこいよ。」


「試合なんだ!勝っても負けてもパフェ奢ってね!」


「はいはい。いーから早く行けよ。眠いんだあたしは…」


「そのまま永眠してほしいな!じゃ、行ってきまーす♪」



 ド タ ド タ

 バキバキドカァァアン






「………あんの野郎!!!」


その後、家の修理に追われた華魅が昼寝をすることはなかった。






おわり







 † † †
あとがき)))ナナは翔天馬家を走ると必ず転びます。石頭なので必ず家は破壊されます。
タイトルは華魅のハナとナナをくっつけてハナナ。



ハナナ日和


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