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みょうじは用意周到だった。
聞けばタオルも飲み物もこのために準備したのだという。
保冷剤入りのスポーツドリンクが入った袋からコンドームが出てきた時には、海堂は目をむいた。

しかし、その狼狽える様子などどこ吹く風でみょうじは唇を貪る。
始めは表面同士が触れ合うだけ。下唇を甘噛みするのも忘れない。
そうして熟れたそこが迎えてくれるのを待った。
舌先でつついたタイミングで、恐る恐ると形容するのが相応しい感じに口が開く。

漏れた海堂の吐息は苦しそうだったが、生憎、みょうじには好都合だ。
舐って、吸い上げて、押し付けて、呼吸を丸ごと飲み込む。


「ふ、はッ……っ……は、っあ……」
「っは、その顔、めっちゃそそる」


濡れそぼった唇を親指で拭うと、にや、とみょうじは意地が悪そうに口角を吊り上げた。
そして、慣れた手付きでベルトとズボンを緩めつつ、隠しようのない膨らみを見て更に笑みを濃くする。

海堂も乗り気じゃん。まるで盛っているのは自分だけじゃないと言わんばかりの口振り。
甚だ心外な言いぐさだったが、反論するだけの余裕は残念ながらない。

それよりも、下着の上から撫でるみょうじの指先の方が死活問題だった。
擽るように上から下からなぞられ、布地を擦り付けるように先端部分が刺激される。
時折、やんわりと揺するように袋を揉むのも、また腰を重くさせた。


「待っ、ン! っく……よ、ごれッ……ふっ、……から、ァ、っ」
「はは、気持ち良いなあ? 海堂」
「、! っ……ん、んッ、や……!」
「ああそうだ。さっきは随分、桃城と楽しそうだったな」
「? な、に……? ッ! そ、れ、っぁ、ヤバ、」


じりじりと内側から外側から焼かれる。
みょうじの声が上手く聞こえない。ただ、抗い難い熱が迫り上がる感覚だけが鮮明だ。
回らない頭で必死に懇願しているというのに。まだ授業も部活も残っているというのに。
我慢が出来ない。手も止まらない。
目的を果たさんとするこの指使いに、海堂はいつも勝てなかった。

あ、と思った時には既に手遅れで。力が抜ける身体と染みを作った下着に目頭が熱くなる。


「……ほんといいかお」
「汚れる、って……、いったのに……っ、ふ」
「じゃあ、もっと汚れる前にズボン脱いじまおうぜ」


腰上げて、興奮しているのかみょうじの声は僅かに上擦っていた。
みょうじは欲情した表情を隠さない。それが初心な海堂に効果覿面であることをよく知っているのだ。
剥ぎ取った衣服を脇に避けると、次に自身の衣服を寛げ始める。
達した余韻でまろんだ思考のままその動きを目で追って、そそり立つそれに、ごくり、喉を鳴らした。


「ッみょうじ、せん、ぱ……んん!」


呼んだ行為に意味などなかったが、極々自然な流れでまた口が塞がれる。
そのまま互いの舌が舌の根をなぞるのに合わせて、みょうじの手によって互いの逸物が扱われる。
跳ねる海堂の腰を押さえ付け、「海堂も触って」と熱い吐息と一緒に囁く。
沸いた頭では正常な判断が下せない。だから、これも仕方がない。
誰に向けたわけでもない、強いて言えば己に向けた言い訳が浮かんで霧散した。


「っ、上手、……ぅ、く……」
「は、あ……うっ、ぁ……せ、ん、ぱっ!」
「はあ、ッ……海堂、こっち……見ろ」
「あぁぅあ、っ! せ、ぱ……もッ、ぅ」
「余ッ所見、すんな――――俺だけ、見てろっ」


強く掴まれた顎ごと頭を持ち上げられた海堂は、痛みと驚きに伏せていた目を開ける。
そこには、頬を火照らせ、汗を流し、苦しそうに眉根を寄せながらも真っ直ぐと見つめるみょうじがいた。




「ぐっ、ぅ……ひ、……ぁッ、〜〜〜〜!」




両脚が引き攣って、下腹部に力が入って、小刻みに身体が震えた。
次いでみょうじも低く唸ると、その身体を強張らせた。
二人分の精液は二人の手を白く汚したが、運が良かったのか、制服が汚れることはなかったようである。




白日下の戯れ
-やいてやかれて-



(ゴムはまた今後な、死ぬ……あつ)
(はい……あの、次は室内でお願いします……)


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