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空は晴れていて空気も澄んでいる今日は絶好の初詣日和だった。
毎年恒例である長蛇の列に並びお参り。
一年の挨拶をしたところで、これまた恒例の物を引く。
これの結果に妄信するつもりはこれっぽちもないのだが。
いくらなんでも、これはショックを受けるだろう。
ショックというか衝撃というか。とにかく、これは、ない。

「やっりい! 俺、大吉ぃ! よーし、今年も頑張っちゃうぞー! ねえねえみょうじはどうだったの?」
「……マジかよ」
「どれどれ? ……あちゃー、ドンマイドンマイ! でも、大凶とか逆にこれ引くのって凄い運じゃない?」

きらきらとした大きな瞳が俺を覗き込む。
眩しい笑顔に目を細めながら、おみくじを結ぶため踵を返した。
こんな不吉なもの、さっさと対処するに限る。
その後ろをちょこちょこと付いてくる姿は小動物っぽい。

「嬉しくねーよ」
「じゃあさじゃあさ! 俺の大吉でみょうじの分も補っちゃうもんね!」

それなら丁度良いじゃん!
ぶっきら棒に返した言葉も意に介した素振りはなく、それどころかVサインをして笑う菊丸。
底抜けの明るさは最早天性の才能というか、何と言うか。

「……じゃあ、今年1年きっちり傍で補ってもらうとするかな」
「んー……それは嫌だにゃー」
「は? お前が今補うって言ったんだろ」
「そうじゃなくて! 今年1年だけってのは嫌だから、これからずっと隣で補うことにする!」

想像の遙か斜め上を行く菊丸の返しの数々に、俺は暫く頭を抱えることを覚悟した。この直球具合は未だに慣れない。



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