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なまえさんは俺の交友関係を大切にしてくれる。
だから、俺も彼の交友関係を大切にしたい。

「そうだなあ……うん……っはは、おま、何言ってんだよ」

でも、そんな意気込みとは裏腹にもやもやとしたものが胸を占める。
折角なまえさんの家族が居ないから泊まりに来ているのに。
一緒に年越しを迎えられると思っていたのに。
それが、電話一本に妨げられるとは考えもしていなかった。

――――あ、ごめん電話して良い?こいつ親友なんだよね。

「(親友さんが大事なのは知ってるし……別に、一緒に居るし……この後も、明日も一緒だし……)」

至極楽しげに笑う彼の横で漫然と鳴っているテレビを眺める。
別段何が見たくてかけている訳ではなかったから、今かかっているのはなまえさんが親友さんと話すためのカウントダウン番組。
あと少しで年を越すのか。こんな何とも言えない感覚のままで。
時折気にかけてくれるなまえさんに抱き寄せられるけど、正直複雑な気持ちしか湧かない。
そんな中途半端な気持ちで、大半の意識を電話口に向けながらで、俺の相手などして欲しくなかった。

「(我侭、やな……)」
「でさ……ん? あれ? もしもーし……あちゃー……回線混んでんのかな」
「? どしたんすか」
「いや、何か突然電話切れちゃって」

ま、いいか。そう言ってあっさりと携帯を机の上に置いたなまえさんは、優しく俺の頭を撫でた。直後、年が明けた。
明けましておめでとう。その言葉と笑顔をもらって、確かに俺は親友さんには悪いけれど、電話が切れたことを喜んだのである。



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