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「はあー……あったけー……」

なんて暢気に間延びした声だろう。
この家の住人ではないこいつは、突然やってきてまるで自分の家であるかのように寛いでいる。
今日は所謂三箇日の中の1日。世間では一家団欒が普通のはずだ。
つまり、何が言いたいかというと――何故、丸井がここに居るのかということである。

「マジお前、何しに来たんだよ」
「こたつ」

俺の問いかけにいけしゃあしゃあと悪びれもなく答えた丸井は、やはり我が物顔でリモコンを弄っていた。
その堂々たる姿には最早絶句というか溜め息しか出ない。
そうこうしているうちに適当にチャンネルを回し終えたのか、「つまんね」と呟くと俺に向かって唇を尖らせる。

「なあなあ、みかんねえの」
「……はいはい」
「あとジュース! お菓子!」

要望に応えるべく立ち上がった背中へ続けざまに注文を受け、台所で苦笑いを溢した。

「ったく……自分で用意しろよな」

ふと漏らした一人言が意外にも嫌がっていないことに呆れてしまう。
存外、悪くない――――そう思う自分が居たのだ。
部活が始まるまで、会うことはないと思っていたから余計にそう感じるのだろう。我ながら単純な思考だと思う。
だけれど、ご所望のジュースはなかったから緑茶で我慢してもらおう。
今日は賑やかになりそうだ。



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