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※ 先天的女体化




いつもと変わった風にしたい。
そう唐突に言い放ったのは四天宝寺の女王と名高い俺の彼女だった。
ユウは気紛れ屋で気分屋だから付き合うのには少々骨が折れる。
機嫌を損ねるのは頻繁だし怒られるのも日常茶飯事。

それでも付き合っているのは、ひとえにユウのことが好きだからなのだが。
これが中々理解されない。無理に理解されようとは思わないけれど。


「あ、痛いんは却下な」
「当たり前や! ……んー……後ろから、とか……?」
「……まあ、ええか」


貧困な脳内で出した提案は酷く凡庸な気がしたが、彼女はそれでも良いらしい。
早よヤろ。
そう言ってベッドに座ったまま両腕を広げ迎え入れる格好を取るユウは魅惑的だった。

挑発するかの如くつり上がる口角。適度に見上げた上目遣い。

兎に角とても愛らしく、いつも狼になってしまわぬよう必死なのだ。
許可が下りたからと遠慮なく抱き締め、その柔らかさを堪能する。
そして、すっぽりと胸元に収まってしまった彼女の頭を撫でると、くすりと嬉しそうに笑った。


「やっぱ、ええなぁ……」
「おん……?」
「なまえん手…大きくて暖かくて、……安心する」
「! お、おおきにっ」


時折見せるこの甘えた表情と台詞がまた一段と可愛く、今も理性が吹っ飛びそうだ。
しかし、そうやって煩悩と戦っている間にユウはこちらに唇を向けていて。
強請られるがまま、久し振りに塞いだ唇は変わらず柔らかかった。


「……っ、……ん……」
「っ……」
「んっ……、……ぁ、ッ」
「っは、ユウ……手はそっちにやっときや」
「、んっ……ふぁ、……っ!」


ベッドに対して上半身が俯せの膝立ちになるよう促し、背後から覆い被さる。
やんわりと胸を弄りながらユウの反応に気を配りつつ。
胸へ意識が向いている間に、秘部へと指を優しく労るように滑らした。
痛みは少ないに越したことはない。
撫でるなら指の腹で。擦るなら限りなく力を抜いて。
そうすれば、自ずとユウも感じてくれるはずだ。


「ッぁ……ふ、……あ、ッん……っ」
「痛ない? 痛かったら、ちゃんと言うてな」
「わ、ってる……! ァッ……、……ぅあ、や……っ……、」


後ろからだからはっきりとは判らないが。
必死にシーツを掴んでるとこや真っ赤になった耳を見るとちゃんと感じてくれているようだ。
それが純粋に嬉しい。


「あ……っぁ、ん! ……、ッぁ……」


嬉し過ぎて、行為をそっちのけに抱き締めてしまいたくなる。
そんなことをした暁には、彼女の雷が落ちることは必須なのだけれど。
だから、感じてもらえるように全神経を注いでいる。




「……ッユウ、一回イっとこな」
「えっ、ぁ……や、ちょ……っふぁ! っ、んん、なまえっ……あッ、」
「っ……」
「あァッ……ん、あっ、ぁ、ふああッ――……!」




びくっと全身が跳ね、その一瞬後にユウの身体から力が抜ける。
そして俯せた状態で吐息を乱し余韻に浸っていた。
そんな姿も扇情的だ。


「……な、なまえ……っ」
「なん?」
「いれて、……ええよ……」
「! ほ、ほな…ちゃんと解してから、な」
「ん……できるだけ、はよぉ、な」


くてりとしているユウの頭を再び撫でてから、言われるがまま溢れる蜜液を指に絡ませ中を押し広げた。
そこは暖かくて柔らかくて。とても繊細。
傷付けないよう細心の注意を払って指の本数を増やす。
そのままぐるりと円を描くように慣らしていると、焦れたらしく弱々しいユウの手が俺の腕を掴んだ。


「っ……も、入れ……や」
「まだ……キツいやろ」
「なまえのが、ッ欲し、ねん……!」
「おま、〜〜……ッ!」
「ふ、ああぁッ!」


僅かに潤んだ瞳で懇願されて、耐えられる男がいたらお目にかかりたい。
痛みなく優しくしようなんていう考えは呆気なく押し退けられ、ただ衝動の赴くままに挿れて腰を引いた。


「っあ、あ、ン、っふ、……!」
「す、まん……! 我慢、出来なっ」
「え、えからッ……ひ、ぅッあ、あ、っあ」


最奥を突く度に中が締まり声にも艶が出る。
それに触発されるように動きに速めれば、合わせて上がる声が段々と高くなった。
身体中が熱い。互いが触れている部分なんか殊更熱く火傷しそうだ。




「やぁ、ァッあ、まっ、た……、イって、まう……ッん」
「俺もっ、も、限界……っ」
「あ、なまえっ……なまえ、あ、ぁッあ! ――――っぁ、……ぅ……」




悲鳴染みた嬌声がぴたりと止んで、部屋には急いた吐息だけが満ちていた。
力なくベッドへ身を預けるユウを後ろから抱き締め、ぎゅっと手を握る。
握り返してくれた手に力なんて全く入ってはいなかったが、その意思は確りと伝わって。

ああ、これが俗に言う“幸せ”ということなのだろうか。
あんなにも普段はつんけんとした表情と態度なのに。
時折(ついさっき拝んだが)見せる笑みだとか。最中と事後にだけなる蕩けた顔だとか。
俺にだけしか晒さないものを一人占め出来るこの感覚。なんて、堪らない。




独占権
-これぞ恋人の特権なり-



(ユウ、好きやで)
(っ……ウチかて、好きやし)


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