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ああ、幸せだな。と、思うことが多々ある。
それは、放課後一緒に帰ることだったり、休日に一緒に動画を見ることだったり、一緒にスマホで遊ぶことだったり、上げればきりがない程色々あるのだけれど。
特に泊まりをした日の朝が一番強い。まあ、現在進行形だったりする。


「(……気持ち良さそうな顔、あ、起きそう)」


もぞもぞと身動ぎ薄く目蓋を開けた光さんはぼんやりと俺を見る。
多分、俺を俺と認識していない。だってほとんど開いてないし。
そのままじっと見つめた後、擦れた声で「、はよ……」と言った。天使。

けれど、まだ眠いのかおもむろに目元を擦るとまた布団の中に逆戻りしていく。可愛い。
因みに戻りながら俺に擦り寄って来たりする。ますます可愛い。


「光さん、今日こそ早く起きるって言うてたやないですか」
「……んー……」
「また、昼まで寝てまいますよ」


個人的には昼まで寝ていても全然構わないのだが。どうせ行き当たりばったりな日程だ。
折角声をかけているのに、光さんは一向に起きる気配を見せない。
あーとかうーとか、果たして起きているのか微妙な呻き声を発するだけ。
彼が起きずとも全く困らない俺も、大して真剣に起こしたりはせず。
寝惚けた光さんの額やら頬やらにキスして遊んでいる。あ、趣味です。
そうして遊んでいるとむず痒いのか、またしても身動いだ光さんはうっすらと目を開けた。
すると、その薄い唇によって口が塞がれ、ふにゃっと嬉しそうに笑ったのである。

その顔の破壊力といったら、もう。


「〜〜〜〜っ、俺を萌え殺す気っすか……!」
「……阿呆か、」


思わず光さんの頭を強く抱き締め、ワックスで固めてない柔らかい髪に頬を寄せ、悶える。


「俺なんかよりなまえの方がよっぽど萌えるわ」
「いやいやいや、それはない」


頬擦りしている間に覚醒したらしい。
舌足らずな声音から呆れたものへと変わっていて、視線も同じだった。
一々返す言葉が態度が俺のツボ過ぎて、最近ではいくつ心臓があっても足りないのではと思う。
光さんの言葉に被せる勢いで発した否定。それに対する少々不満げな顔付き。
それを直視した俺の表情はきっと緩んでいる。想像ではなく確信。

何でこんなに彼は可愛いのだろうか。謎だ。
ああもう、そんな無防備な顔で見つめないで欲しい。




「! ん……ッ、ふ、ぅ……、」
「……ん、…」
「ん、ぅッ……! 起きるんや、ッは……なか、た……あ、んっ」
「だって、光さん可愛えんやもん」
「理由に、なってへ、んんッ……あ、ぁあ……!」




彼は本気の抵抗をしない。だからいつも済し崩しに俺の好きなように事が進む。
曰く、抵抗する必要がない、とのことらしいのだが。
それがいつも俺を舞い上がらせている。今だってそうだ。

視線が合った、ただそれだけでキスをした俺を受け入れた。
キスをした時の漏れた声が可愛かった、ただそれだけで押し倒して胸を弄りだした俺を受け入れた。

抗議の言葉は上がったものの、そんなものに効果など無いことはとっくの昔に承知済みだ。


「朝っぱらっすけど、ええの……?」
「っ別に……好きにしたら、ええやん」
「光さんが嫌ならせえへん……無理矢理なんて、したありません」


既にちょっと弄ってしまっている手前、嘘くさいが、これは本心である。
押し倒した状態で信じてくれという方が無謀かもしれないが、やはり本心である。
弾んだ吐息をそっぽ向きながら整える横顔にそそられて。
早く拒絶してくれないと、焦れた脳内はその曝け出されたうなじを甘噛みしたくてうずうずしている。
それなのに、光さんは全くの意表を突いてきた。

「……嫌やない、から……シてや」

なんて思いっきり俺の首に抱き付いて来て。
今の台詞を耳元で囁くオプション付きが、この人なりの精一杯のおねだり。
実際、効果は抜群だった。


「んん! ……っ、ふぁ……ぁッ、あ」
「ほんま、可愛え人……」
「そ、なこと……あっ、んぅ、らへんッ……ん、っん」


弄れば直ぐに硬くなる胸を堪能しながら、柔らかな唇を貪る。
その度に身体を震わせ跳ねる姿がますます俺を煽った。
次第に赤みを帯びる頬。熱に浮かされぼんやりとする眼。嬌声と吐息を入り交ぜる唇。
どれもこれもが思考を掻き乱す。手が止まらない。


「っ……はッ……、ッなん……?」
「脚開いた方が気持ちええですよ、多分」
「ちょ、待――……あ、あァッ!」


光さんの身体に力が入っていないのを良い事に、するりと股の間に片脚を滑り込ませる。最早おざなりとなった静止は遮って、手早く中心を握り上げれば、その刺激に彼の全身は震えた。




「やッ……ぁ、あ、っん……ん、……!」




なけなしの理性を総動員して声を塞ごうと躍起になって、でも、途中から全く意味がなくなって。
上下に擦ったり、裏筋や鈴口を重点的に攻めてみたり、逆に緩く焦らすように動かしてみたり。
その都度上がる声に、ますます麻痺してくる。

ギシギシと軋むベッドも揉みくちゃにされたシーツも蹴飛ばされた布団も。
光さんが感じてくれている紛れも無い証拠で。単純にその事が嬉しくて愛おしくて堪らない。
そして、もっと、もっと、と浅ましくも欲するのだ。


「あ、ぁっあ……! は、ぅぁ、もっ……い、……くッ、」
「っ……は、……」
「、あっ、ぁ……ひ、ッぅ!! ……ァ、っぅ――――」


広げられていた身体が一瞬にして強張った。
縮こまるように身を丸め、ひくり、ひくり、と痙攣を繰り返す。
ティッシュすら用意する理性が俺にあるわけは無く、掌にべったりと付いた精液。
加えて、まどろんだ眼で「なまえ、好きや……」なんて言われ、最高の幸福感に満たされた瞬間であった。




朝日の下の秘事
-日を遮るランデブー-



(光さん、めっちゃ可愛いかったっす)
(……さよか)


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