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※ 後天的女体化




鏡の中の自分自身を見て感嘆の溜め息を零した。
薄く施した化粧。ミニスカートから伸びる両脚は真っ直ぐで。
そこらの同年の女子達よりは可愛い、はず。俺頑張った。うん。

「……よしっ!」

何事も気から。そう言い聞かせて、待ち合わせの場所に向かった。
大丈夫。この日のために柳姉弟にも協力してもらったのだから。



***



雲一つ無い青天。絶好のデート日和である。
待ち合わせ10分前。直前にお手洗いの鏡で身だしなみを整えた。

ああ、まるで本物の女子になった気分だ。
ちらっと既に待ち合わせ場所で立っているなまえを見て、溜め息を吐く。
今日も彼はカッコいい。


「なまえっ」
「おお、はやかっ……精、市……?」
「……やっぱ、変……かな」


俺の姿を見付けた途端に目を見開いたなまえは固まってしまった。
その反応に少し落ち込んだのだけれど、なまえの次の行動にそれも取り越し苦労に終わる。
耳まで真っ赤にして「可愛過ぎんだろ……っ!」そう言う彼の表情は初めてで。
柳に手伝ってもらった甲斐があった、と心の中で秘かに笑う。


「……笑うなって、」
「ふふっ、だってなまえが可愛いから」
「くっそ……で、何で女装してんの」
「ああ、これは女装じゃないんだ。柳にちょっと手伝ってもらってね」


女子の身体にしてもらったんだ、そう言った俺の言葉にまた目を瞠目させるなまえ。
普段は彼に主導権が握られてばかりだったから。少し新鮮。
未だに俺と視線が合わせられない彼の腕を取って、予定の場所へと足を向けた。

いつもだったら出来ない行動も今なら出来る。それが何よりも嬉しい。
人前で堂々と腕を絡ませて、恋人繋ぎをして、キスは流石にしないけど。
どれもこれも、人目に気を配ることなく出来るのだ。

なんて、幸せなんだろう。


「なまえ」
「うん? 何?」
「……ううん、なんでもない!」
「変な奴」


口ではぶっきらぼうに返しているが、その顔付きは柔らかく。
それがまた俺の気分を昂らせた。
行く先々で囁かれることはあっても邪魔されることはない。

初めてと言っても過言ではないぐらいに今日のデートは順調だった。
気になっていた店も見れたし、美味しい昼食も摂れた。そして、俺の右隣には常になまえの姿がある。
この胸の温かい気持ちをなまえにも知って欲しくて、帰り際彼の腕を引いて口を開いた。


「なまえ、好きだよ」
「! ……ったく、お前は、なんでそう……はあ……」
「? なまえ? どうし、っわ――――?!」
「頼むから煽るようなこと言わないでくれ……っ帰したくなくなるから……!」


耳元で呟かれた消え入りそうな声音はとても熱く、彼の懇願とは裏腹に俺の身体を刺激した。
吃驚したあまり固まっていた己の腕を背中にそっと回す。
身体が女子になっているためか、思考までも乙女チックになっているようだ。
ぎゅうぎゅうと抱き付いてくるなまえが愛しい。


「家、上がってく?」
「……え、」
「まだ時間、あるんだろう?」


煽る様なことをするなと言われたばかりだけれど。俺も欲しいのだから仕方ない。
なまえが欲しい、そう言えば少し悔しそうな表情を浮かべた彼はあっさりと俺の部屋へと上がった。






「んっ……ぁ……ふ、」


そして、部屋へ着くなりベッドに押し倒され唇を塞がれる。
いつもより荒々しく余裕のない行為に俺はされるがままで。やっぱり、新鮮。
キスをしながら必要最低限に服を寛げられていき、するりと入ってきたなまえの手にぞくぞくした。
何も興奮しているのはなまえだけではないのだ。


「っあ、……ん、っふ、ぅ……ッァ」
「ごめん……ッ今日、優しく出来ない、かも」
「んッ……大丈、夫だから……なまえの、好きなよう、っに……ひ、ぅ」


擽られるように身体中をなぞられ、背筋から腰にかけて走る甘い痺れ。
それを繰り返されるにつれて、触れられてもいないのに中が熱くなったような気がして。
少しだけ両足を擦り合わせる。
それをなまえは見ていなかったはずなのに、彼の利き手はそれを遮る様に押し広げた。

なぞる手付きは何も変わらず、今度は背中から太腿を焦れったく何度も往復する指先。
決して決定的な刺激にはならない。けれど、確実に身体を昂らせていく。


「ぁッ、……あ、っや、意……地悪ぅ……は、――ッん、」
「精市が、あまりに可愛いから……つい、さ」
「ひ、ぁあっ! や、ァッ……、だめっ……あっ、んぅ!」


やにわに指が秘部を弄り出して、背筋を駆け抜ける快感に腰が引ける。
しかしそれを彼が許すはずもなく。腰は元の位置へと逆戻り。
そうして悪戯な彼の指は入口付近を数回弄ると、ぬぷり、とゆっくりかつ慎重に侵入してきた。
男の身体の時よりも全然抵抗感がない。


「指増やすから、痛かったら、言えよ……っ」
「う、んっ……っは、ぁ、、あッ」


あの時は気持ち悪くて仕方なかったのだが、今はどうだ。気持ち良くてどうにかなりそう。
中を弄る指は温かくて熱くて。でも物足りなくて。
触れて欲しいところは、もう少し奥だった。




「、なまえッ……なまえ、ぁ、あっ……も、入れっ…てぇ……!」
「だから、ッ煽んなって……ああもっ……っ、は」
「っああ! ……ひ、ッぁう……あ、っあ、」




薄く開いた眼が、眉間に皺を寄せながらも気持ち良さそうななまえの顔を捉えた。
ああ、カッコいいな。
ガンガンと突き上げられる感覚に意識を持っていかれながら、そう思う。
こんなカッコいい彼が男も女も関わらず俺に欲情してくれている、それがすごく嬉しい。


「ちょ、だっ……あっ、なまえッの……せ、しっ…欲し、ぃ……ふぁ、あッ」
「! っあ、あ……出して、やる、っよ」
「ん、ぁ、あっあ――――っ!」


じわ。きつく締めた中に広がった熱い感覚に、堪らなく愛しさを覚えた。




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-きっかけは些細なこと-



(なまえ、大好き……っ)


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