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「やったーちゃー一緒んかいいるよな」


何の気なしに言われた言葉にはどこか呆れの色を含まれていた。
いきなり何だと言わんばかりに甲斐を見返せば「だってよ、」と更に畳み掛けられる。
曰く、この中学三年間を見続けて感じたとのこと。


「うーっわ、遅え」
「今更やっし」
「酷い言われよう! え、ぬぅやったー」


わんは全校生徒を代表して言ってやったんだっつの!なんて、押し付けがましいにも程がある。
だけど、ずずずっと牛乳を啜る凜は意にも介さない。
いや別に俺も本気で相手にはしていないんだけど。

それよりも、ちまちまと啜る凜が可愛いと思うんだ。
別に身長なんか低くないのに、必死に牛乳を飲む姿とか。
牛乳好きじゃないくせに。痩せ我慢。


「まーくんねーん」
「じゃあ、こっちのフルーツ牛乳と交換するか?」
「……ん」


無言で突き出された牛乳パックとまだ半分ぐらいしか飲んでいないフルーツ牛乳パックを交換した。
フルーツ牛乳は甘いからまだ飲めるらしい。
それにうんざりしたような眼差しを向けてくる甲斐。

いい加減諦めれば良いだろうに。

甲斐(というよりも周り)がどんな表情をしようとどんな言葉を吐こうと、変えるわけがないのたから。
この関係はひどく落ち着くのだ。
きっとこの感覚は凜も一緒で、だから行動を共にしている。と思う。


「やーさちゃー交換しちゅんなら、最初からそっちを買えば良いんに」
「…くまだと効果ねーんかもしれねーんひゃあ」
「んれー半分でギブアップじゃ意味ね−んひゃあ」
「……」
「気持ちの問題だもんな?」


珍しく正論な甲斐の言葉にぐっと押し黙ってしまった凜。
そこに助け船(?)を出して、漸く凜が薄く笑った。
あ、意地の悪い顔してる。




「まあ、気休め程度だし? たーがらさんよりはたかさんからしむんさあ」
「っなあ!」
「そうそう別に知念とか木手ぐらいになる必要ないもんな」
「ただ、もう少しあればって思っただけだし」




したら、なまえと並んだとき丁度いーくなるんに。

最後の方はごにょごにょとしていてよく聞き取れなかったが、俺にはちゃんと解った。
こいつの思考は本当に可愛い。
目の前に居る甲斐なんか文句垂れようとしていた口を開いたまま、遠い目をしている。
大方、言わなきゃ良かったとかなんとか思っているのだろうな。


「っもー可愛い奴め!」
「おわッ?! おい、なまえ……っ!」
「凜、好きだー!」
「ッ……わ、わんもやっし」


言っているそばから耳まで真っ赤にする凜が殊更愛らしくて堪らない。
つい衝動の赴くままに金に染んだ髪を撫でて、大人しく撫でられているその姿に胸がきゅんとした。




蜂蜜ドロップス
-甘く蕩ける-



(わんが可笑しいんかなあ……)


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