project | ナノ
※ 先天的女体化




立海大附属には毎年学校全体が精力を上げて行う行事が多々ある。
海原祭。体育会。ミスコン、etc。
特に、ミスコンは相当な盛り上がりをみせていた。
勿論みょうじもその一人には違いない。しかし、周りとは少し事情が異なっていた。


「みょうじ!」
「おー丸井。……へえ、似合ってんじゃん」
「っほ、ほんと!?」


良かったー!と本当に嬉しそうに胸を撫で下ろす丸井。
彼女はみょうじの恋人であり、今年のミスコンの優勝候補である。

丸井は美人というよりは可愛い系の類。
今現在着ているヒラヒラとしたミニスカートに、そこから伸びるニーハイを穿いた脚はとてもよく似合っていた。
特にお菓子を食べているときの笑顔はハートを飛ばすほどで、愛らしい。

そんな彼女をみょうじがどう射止めたかは置いといて、とにかく自慢の恋人だ。


「これ誰かの服?お前そういう服持ってないだろ」
「うん! 幸村さんが持ってきてくれたんだ」
「幸村か……流石、よく解ってんな」
「凄いよねー」


ふにゃっと頬を緩めた丸井にみょうじまで釣られて表情を緩める。
何も容姿だけで選んだわけではないけれど、丸井の笑顔に癒されているのもまた事実。
その衝動に抗わず、この場が廊下だということもお構いなしで柔らかい身体を抱き締めた。
それにあたふたとしだすその姿もまた小動物のようで、ますます腕に力をこめてしまう。
標準よりも大きめのそれも胸に感じるため、余計締まりのない顔になる。

最も抱き締められている張本人は見えていないのだが。


「みょうじっ、ちょ、ここ廊下、廊下!」
「んー……離したくないなあ」
「っえ、いや、それは嬉しいけど……って、そうじゃなくてぇ!」
「……ごめんごめん、自重するから」
「むぅ……TPOを弁えろいっ!」


ぷくー、膨らませた頬にまた悪戯心が刺激されて――――実行してしまった。
みょうじの人差し指が丸井の頬に突き刺さる。

沈黙。間。

先に動いたのは丸井だった。




「――――……い゛だだだだだ、痛い、痛いッ」
「みょうじくんは何をしてるのかなあ?」
「すんませ、つい、出来心で……いだあ!」




平和な校内に上がった悲痛な声。
今度は丸井の指がみょうじの頬を抓ったのだ。
引っ張るとかそんなものではなく、ただ強く抓った。
曲がりなりにも女子テニス部員。握力は半端無い。

結果的には直ぐ離してくれたのだが、みょうじの頬は痛々しくも残念な感じに赤く跡がついた。


「丸井ー……せめて、もっと優しく……」
「男がヤワ言ってんじゃないっての」
「いやいや、痛いもんは痛いって」
「はいはいすいませんねー。ところで、何か持ってない?お腹空いた」
「ええー……あ、そういや母さんからお前にマドレーヌがあるわ」
「まじで!? よっしゃーッ!」


数秒前までの不貞腐れた表情が一転。満面の笑みへと瞬く間に変わった。
そこで漸くみょうじの悲痛な表情も穏やかなものになる。
――――んじゃ、行くか。
促されるまま歩き出して、自然と歩く速度を合わせてくれるみょうじにまた嬉しく思う。


「ふへへー」
「えらいご機嫌になったな。そんなにマドレーヌが楽しみか?」
「それもある♪」
「も、?」
「なーいしょ! ほら早く行こ、マドレーヌが待ってる!」


少し不思議そうな顔付きを残していたみょうじだったが、逆に手を引かれてうちにそれもなくなった。
ひらり。私服故の短めなスカートが目の前で舞う。
それをみょうじは眩しそうに目を細めながら見つめ、少し、握る手に力を込めた。




one’s daily life!
-こんな日々-



(丸井……幸村には悪いけど、違う服装で出てくんない?)
(何で?)
(可愛すぎて他の奴に見せたくない)
(っ――……ばーか)


×
- ナノ -