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「――――……なまえ、ッ!」
「……ユウジ? って、ちょ、何?!」


用を足して出てきたなまえを再びトイレの中に押し込んで。
バタンッ――けたたましい音を上げて閉まった個室トイレ扉の施錠確認。
喧嘩中なのが嘘みたいに唖然としているなまえを無視して頬に手をかけた。

何か上から言われるが何も聞こえない。
右から左へ筒抜け状態。
だって欲しいものが、目の前に在る。

そして、遠くに授業の開始を報せるチャイムの音を聞き流した。


「あ、む……んっ……、……は」
「……ッユ、ジ………っ、ちょ、!」
「んん、……なまえ、ん…………っふ……」


禁欲を食らっていた分性欲が増して、頭でもイカれてしまったのか。
どろりと口内から溢れる無味のその味にどろりと思考が鈍り出して。
もっともっとと強請るみたいに滅茶苦茶に舌を動かし口の周りを唾液で汚す。

上からくぐもった声が聞こえた。いい気味だ。


「……っは……、ん……んんっ」
「……ッお、ま……! も、破るつもりかよ」
「あ、んな一方的なん……っ今まで、我慢出来たんが奇跡、や……ッ!」
「――っぶは! ったく、お前は……しょうがねぇな」


今までのぶすっとしていた表情が嘘みたいに表情を崩したなまえ。
それは、以前と変わらないいつものなまえだった。

慣らすから舐めて、と差し出された細長い指にゆっくりと舌を這わせて。
するすると身体を撫でるその手つきに腰が戦慄く。
舐る舌を止めること無くそろりとなまえを見上げて、熱っぽい視線に目を細める。

これだ。これをずっと待っていたのだ。
数週間耐えて待ち続けていたこの視線が堪らなく。俺は。


「……っは……んく、……なまえ、……好き……んぅ」
「! ……ッ、」
「っぷは、……―っは……ッは、ぁ……んんっ!」
「こっちは……使ってない、みたいだな……うん」
「あたり、まえやッ、ァ………く、ぁっ、」


纏わせた唾液が乾いてしまわぬうちに後ろの蕾に侵入を果たす指。
久し振りの感覚に痛みを伴うものの、それを誤魔化すだけのものが目の前にチラついている。
さっきのキスでてらりと照明に反射する唇。少し熟れた風にも見える唇。
まるで魅せられたかの如く見つめて、吸い寄せられるように再び塞いだ。


「! っん……」
「ん、ぅ……っ………、んは……ッン」
「……っは……」
「、んむ……ッ……は、……ん、ぅあ! ッぁ、や……!」


次から次ぎへと溢れ出てくる唾液を飲み下しながら、懸命に舌を動かす。
さっき指にしたのと同様に動かして、でもなまえには対した効果はない。
むしろ逆に俺の舌が強く吸われたり歯列をなぞられたりと背筋にぞわぞわとしたものが走った。

あかん、足腰立たへんくなってきたかも。

ぼんやりとそう思いつつも久々のキスは気持ちが良くて。
夢中で貪っていると背骨を突き抜ける刺激に驚いて口を離してしまった。




「っは、あ……ッ……なまえ、?」




ゆっくりと目蓋を開けぼやける視界の中でなまえがにやっと笑う。
その顔に、どくり、と胸をときめかせている間に指が抜き去られ。
来る、なんて身構える前に皮膚が裂けた痛みと熱く滾ったなまえの一物が挿入される快感が綯い交ぜになって襲ってきた。


「――――……ッァ、あ! ……ひ、……や、あっ……、ッ」
「く……ユウ、ジッ! きっつ……っは、」
「ふぁ、あッ……っん、う……、……あ――っあ!」


そして、後はもう雪崩れ込むように。
突いて抱き付いて抉られて縋り付いて。
迸る体液という体液が気にならないぐらいの行為は苦しくも胸に沁みた。




Avalanche Action
-崩れたら跡形もなく-



(少しは、俺にも構えっての)
(……はあ?)
(はー……)


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