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「日吉」
「……みょうじ、止めろ」
「…何で」


近付けた顔から逃げるように顔を背け肩を押す日吉。
その表情はキツくさながら睨み付けるよう。
分かりきった事に対して俺が疑問を投げ掛けた所為だろう。
信じられない、物言わぬ眼がそう語っている。

理由は明白。ここが図書室だから。
因みに俺は図書委員で今日の当番。そして、相方は体調不良につき欠席。


「本気で言ってんなら殴るぞ」
「冗談だって……ったく、相変わらずお堅ぇな」
「お前が節操ないだけだ」


ふんと軽く鼻を鳴らし、俺に向けていた視線を手元の本に落とした。
ブスッとした顔付きで"奇怪!学校の七不思議"なんて陳腐なタイトル本を真剣に読んでいる。
そのギャップも可愛い。

だけれど勿論その間、俺は無視なわけで。
とどのつまり、暇。

放課後の図書室なんてもっと人が居ても良いと思うのだけれど。生憎人一っ子も居ない。
こんな閑散とした空間など俺とは無縁も良いところだ。
日吉が居なければ絶対来ない。

だからこそ、自制させる他人が必要だったのだが。


「(……つまらな、……あ!)」
「……っ、! いきなり何す」
「ああ、日吉はそのまま本読んでて良いぜ?」


背筋をピンと伸ばしたまま読書に勤しんでいる日吉の背後から抱き付いてやった。
暇潰しという名の悪戯。
すると腹部に回された俺の腕に一瞬身体を強張らせて、顔だけ振り返る。
細い目が鋭く睨み、強く唇を噛み締めていた。


「俺は俺の好きなようにやっから」
「は? 意味分かんな……っ……く、」
「(めっちゃ我慢してんな……)」


すり、脇腹を擦るようにおもむろに手を動かした。
弱々しい拒絶の声。だが、そんなものは却下。
もう一押しでこいつは、落ちる。

指先が丁度胸の飾りに触れた瞬間、大袈裟なほど肩をびくつかせ恨めしそうに瞳を揺らす。
それを一笑に付すかのように胸から腹、腹から腰へと撫で回す手は休めない。


「……ぁっ……、……ッふ、」
「エロい腰…揺れてっぞ」
「――――……ッ、!」


かっ、とそれこそ火が付いた如く耳まで真っ赤に染め目を伏せた。
本を握る指は心許なく震え快感を遣り過ごそうと必死。
にやり。内心でほくそ笑む。


「少しは俺にも構えよ」
「ぁ、っ………みょうじ、!」


ほんの細やかな抵抗を試みていた両手を一纏めにし、机に押し付ける。
俺の体重と重力が相まって拘束はより強固なものとなった。
身を捩るも腰は戦慄き、まるで誘っているかのような。


「ぅあ……ひ、――ぁぁッ」
「声でけぇよ、日吉。誰か来んぞ」
「……っ……だったら、退けッば……良いだろ……!」
「やる気満々の癖に良く言う」
「、ぁぅッ……!」


然り気無く日吉の下を寛げた俺はもう片方の手でそそり立つそれを握り込み扱う。
熱く溢れる吐息。
焦点が定まらなくなってきた瞳。

引き付けを起こしたみたいに身体を震わせ、俺の方に下半身を押し付けて来る。
勿論俺のものは勃ち上がった状態できっとこいつも分かっているはずだ。


「あ、っん……ン、や……みょうじ……ッみょうじ、」
「あん?」
「っや、奥……ッ……むずむずする、っぁあ!」
「……っは、」


ぱたた。
後孔に指を突っ込んだ衝撃で下半身を跳ねさせ白い飛沫が飛び散る。
ぎゅっと拳を握り締めながら喘ぐ日吉。

その下肢は段々と開いていた。
ずり落ちていくズボンに曝け出される尻が艶かしくて。
堪らず舌舐めずりする。


「ひぅ……、あ、ァ……っん、あッぁ」
「日吉」
「、? ……っ、んん……!」
「ん……なあ、欲しい?」


呼び掛けに対してゆるゆるとこちらを見上げた日吉の唇を掠めるように塞ぎ、そして耳元に口を寄せた。
欲に染まる双眸は実に苦し気で本能的。
理性的な普段の様とは対照で扇情的に他ならない。
悔しいことにこのような奴に俺は酷く弱く、常に理性の糸を擦りきらしている。




「っ、欲しい……みょうじッ、……お前のが、欲し、っああ!」
「良く、出来ました……っ」
「ふ、ァッ……んん、ぁ、っみょうじ……、っ、んぅ」




それをこいつは知らない。
基より俺も俺で覚らせないようにしているが。
変なとこで鈍いのだ。


「あッ、……、……い、いっぁ、ん……ぁ、あ」
「……っ……う、」
「……ぅぁ――……っあ、や……出るッで、る……っん」
「そ、か……ッ」


だからこそ破壊力満点なのである。


「っあ、あ……や、ッや……なまえ、っぁあ――!」
「、ッ!!」


ああほらまた。
達した姿もまた艶かしかった。




無自覚なる凶器
-耐えるのに一苦労なのだ-



(……っ、所構わず盛るな!)
(その怒鳴る表情は恥ずかしげだった)


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