project | ナノ
じゅる、先端から流れる精液を啜る音は個室に居るせいか存外大きく聞こえて。
大きく目を瞠ったなまえさんを視界に収める。
近付く複数の足音。徐々に大っぴらになる水音。


「ひかっ……あか……、んッ――!」
「……っ、んぅ! ……ん、く……っ……は、ぁ……」
「ッ、おま、何しとんねん……! 止め、」
「なまえ?」
「……も、遅い……っすわ」
「……え、財前くん?」
「何で同じ個室に居るん……?」


口腔内に吐き出された液体を呑み込んで、焦るなまえさんを尻目に手に付いたそれも舐め取る。
あたふたとする彼とざわつく外。


「なまえさ、……も……観念しや」
「――……っはー……ほんま、自分には敵わんわ……」
「……え、と……なまえ……?」
「あー、折角来たとこ悪いんやけど先に戻っとって」
「は……? え、いや、でも」


狼狽えた女達の声に唇が弧を描いた。
なまえさんは連れ戻しに来た女達よりも俺を選んだんや。
嬉々として胸に縋り付くとさっきとは違って優しく頭を撫でられる。
それがとても気持ち良くて、もっとと強請るように逞しい胸元に額を押し付けた。


「まだ時間かかるから」
「ッ! ……分、かったわ」


ばたばた、荒く遠ざかっていく足音になまえさんが息を吐いた。
その動作に無性に不安を駆り立てられ、恐る恐る顔を上げる。
もしかしたら我儘な俺に呆れられたか、と。
呆れられて当然のことを俺はしたのだけれど、どうやらそれは杞憂だったようだ。

見上げたなまえさんの表情は既に行為特有の色っぽいもので。




「ほんま、光は誘うん上手なったわ」




にやり、なんて形容が相応しい笑みを浮かべ手をズボンの中へ滑らせた。
焦らすことなく直に絡みつく指。
急な刺激に身体が跳ねて、笑うなまえさんの吐息にも震える。


「っん、……ぁッ……っは、……あ!」
「もう硬くなっとる……ここ興奮する? それとも、俺ん銜えたから?」
「……や、っぁ……、……んんッ、ぁ、ぁ……」


不規則に動く指の刺激に答えられないでいる俺をなまえさんは別段気にせず。
ピアスだらけの耳たぶを口に含んだ。
あかん、折角声抑えとこう思っとったんに。これじゃあ、抑えられへん。


「あ、っふ…なまえさ……ッ、ああ、ゃ、声ッ出てま、う」
「んー……それは困るなあ」
「ッひあ! それ、あか……んんっ、……あ、ぁ」
「はは……光、先っぽ好きやな」


愉悦を孕んでいそうな声音で、ぐりぐりと先端の窪みを擦る度に下半身が小刻みに痙攣する。
やばいそろそろ出そう。
戦慄く唇で何度もなまえさんの名前を呼んで、この人はただ一言「ええよ」そう囁いた。
その瞬間強く先端を抉られたことで目蓋の奥が光れば全てが真っ白に染まる。

まだ休んだらあかんで、なんて柔らかい声音とは真逆の内容。
それでも、傷付けない様ゆっくりと後ろを解しにかかるなまえさんに胸が熱くなる。


「……、なまえさ……っ……も、ええですからッ……早よぉ……、」
「え? せやけど、まだ……」
「っく、……なまえさんのが、ぁ……欲しゅうて堪らん……です、……ッやから――……っあああ!」


突然の圧迫感と、内壁が奥へと追い遣られる感覚に眩暈を覚えた。
熱い。欲に濡れたなまえさんの視線を感じながら、深く刺さったそれを締め上げる。




――――…光ん中、熱くてめっちゃ気持ちええ

――――…光、痛ないか?

――――…堪忍な…っ




なまえさんの熱い言葉が鼓膜を通して脳にじんわりと浸透していく。
その言葉一つ一つがまるで催淫剤のようで、動いてもいないのに息が荒くなってしゃあない。
ほんまにこの人は、どこまで俺の心を奪っていったら気が済むのだろうか。


「だいじょ、ぶ……や、から……動いっ、ぁ、ん!」
「ほん、ま、すまん……ッ我慢出来ん……!」
「ッああ、! あぁ、あ…っ……ひぁ、ッあ……ぅっあ、ゃ」


薄い個室トイレの仕切りに押し付けられてがつがつ揺さ振られた。
その激しさに必死に食らい付いて、全身でなまえさんを感じることに徹する。
余裕のないこの人の表情が声が吐息が好きだ。
俺だけしか見えてないっちゅーのがよく分かるこの瞬間が。何よりも。


「ふあ、あッぁ……、イくッ……! なまえさ、イってま、うぁ……っは、あッ!」
「ええよ……ッ俺も、出る……!」
「ひ、ん……! あ、ああ、ァッ――――!」


好きなんだ。そして、嬉しいんだ。
ザマーミロ。自分らなんかなまえさんの意識にすら入ってへんねん。




Private nuisance
-私的不法妨害につき有罪-



(ってか、確実にバレたやんなあ)
(そですね……嫌やったすか)
(……いや、もうどうでもええ)


×
- ナノ -