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慣れた腰使いで奥深くと前立腺を交互に抉られて痺れる下肢。
意識を繋ぎ止めとくのに手一杯で耳を塞ぎたくなるような声を止められない。
速くなる律動に比例して近付いてくる絶頂。


「なまえッ……ぁ! ゃ、も……ややッ、ぁ、ぁああっ!」


もう何度目かも分からない。
奴の手に吐き出した精液が薄まって漸くこの行為は終わりを告げた。
荒い呼吸が整わないままになまえを見上げればいつもの如く冷めた面で俺を見下ろす。

ずるりといとも容易く抜かれたなまえの一物。
空いた隙間を埋めようと瞬く間に中が収縮して、この数ヶ月で随分慣らされたもんやと思う。
気持ち悪さはそこそこ軽減しても白石への申し訳なさだけはどうにも無くならなくて。
心と身体がちぐはぐで泣きたくなる。


「……なまえ……」
「……なん?」


答えるのも億劫とでも言うかの様な雰囲気を醸し出して、だけれど俺も引き下がるわけにはいかない。
いつもなまえの圧倒的な空気に飲まれ白石の悲し気な笑顔に絆され、曖昧にしてきた。

心配すんなや。大丈夫。

脳裏に必死に傷を隠す弱々しい姿が浮かんで胸が詰まる。
この前なんて左目蓋にガーゼを当てて、それが飼い猫に深く引っ掻かれたなんて。
これ程見え透いた嘘を吐き続けてまで白石はなまえを繋ぎ止めようと身を削ってんのや。


「も、止めてくれへん……?」
「……それはこの関係か?」
「ちゃう!! 白石のことや……! あいつ……心も身体もぼろぼろやねんッ……死んでまうよ……!」


中3までの晴れやかな笑顔は見る影もなく。
四天宝寺の聖書とまで言わしめたテニスをする身体も弱りはて。
既に立ち上がるのも平生を装うのも疲れてるはずや。

途切れ途切れになってしまわぬよう必死に言葉を紡いで、見据えるなまえの顔の輪郭が歪む。
俺が泣いたってどうにもならんっちゅうのに、止まらない。


「っ頼む……なまえ、ッ!」
「謙也は……白石が俺から自由になれば、満足なんか、」
「? ……なまえ、……?」


声に覇気がない。
不思議に感じて辺りをぼやかす滴を指で拭い去れば、クリアになった視界。
そこに居ったなまえは俺ではないどこか遠くを見とった。
あん時の白石と同じ表情しとる。


「つまりや……俺が居らんくなれば、万事解k「ッちゃう!!」


突然上げた大声に肩を跳ねさせたなまえはゆるゆると不安定な焦点を俺に定める。
しん。
数秒の間が空いて、俺の息を吸う音がやけに響いた気がした。




「俺が言いたいんは、そないなことやない」
「なら、何なん……?」
「自分が暴力止めて、白石を……幸せにしぃや」




これが理想論なのは重々承知している。
それでも俺は、白石は勿論なまえにも幸せになってもらいたい。
俺の言葉が意外だったのかなまえは目を大きく見開いて。


「……ホンマにお前らは、」


と泣き笑いの様な表情で消え入りそうな声音で発した。
だから。分かってくれた、そう俺はこの時勘違いをしていた。




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