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行為の途中から鳴らなくなった携帯を片手に乱れた格好のまま走る。
周りの目なんか気にしてる余裕はなく、なまえに会いたいその一心だけが身体を突き動かしていた。

携帯を確認してほぼ一分おきに入ってた着信とメールの山。

しかしそれも20分前を境にぴたりと止んで、今も折り返し電話をかけているのに出てくれない。
何度コールしても繋がるのは事務的な言葉を発する女性の声。
何回も掛けるとなまえは怒る、けど今はそんなことに構ってはいられなかった。


『――……なに』
「っ、……なまえ!」
『……今更何やの、しかも何回も掛けんな言うたよな』
「ごめんなさいッ、……今そっちに向かって、!」


了承の旨を貰う前に接続を切られてスピーカーからは無機質な音が流れる。
潤みそうになる両目を唇を噛み締める事でなんとか堪えて必死に右脚を左脚を前に出した。


抵抗虚しく中に割り入れられた孔が痛くて情けなくて。




視界に飛び込んできた建物の外観に涙腺が壊れそうだ。
当然なまえの家の鍵なんか持ってるわけもなく、息も整わせる時間すらも惜しくて呼び鈴を鳴らす。


「ッ、……なまえ……! 電話もメールも出んでごめんなさいっ……俺が悪かったからッ、ごめんなさい……!」


インターホンからの応答はなく近隣の迷惑承知で玄関の硬質な戸を叩いて声を上げた。
在り来りな謝罪。
陳腐だけれどそれしかなまえに伝える言葉がない。
許してくれなくたって良いから、ただ顔が見たい。
生身の声が聞きたい。


「ごめんなさ、っ……なまえ、ぅ、開けてぇな……! なまえ、ッ」
「……人ん家の前で騒ぎおってからに、」


完全に涙を抑えることが困難になった頃合い。
固く閉ざされてたドアの向こう側から不機嫌ななまえが現れる。


「ホンマ……人の迷惑とか考えた事あるんか? このアホ」
「……、ごめんなさい……っ」


非難が有り有りと載せられた視線を真正面から受ければ居辛さに服の裾を掴んで耐えた。
見た目が悲惨なのになまえは気付いてくれるんやろか。
ぐいっと乱暴に手首を捕まれると、そのまま玄関口の床の上に引き摺り倒される。
バタン、やはりぞんざいな手付きで鍵を掛ければその細長い指がワイシャツを勢いよく引き裂いた。


「ひ、……やめッ! っなまえ……ぃゃッ、」
「お前は俺のもんやろ。何いっちょ前に楯突いてん。それとも別れたろか? あ?」
「ぅ、やや……ごめんなさいッ……! っ、ぁ……」


きっとなまえは知ってんのや。
俺が何されたのか。
だから、こんな忌々し気に赤い痕を見下ろしてそこに齧り付いて。
痛ッ……あ、血が出とる。

ぼろぼろの身体をそのままになまえは無感情に俺を貪る。
その行為になまえが何とも思ってなかったとしても、確かに俺は安堵を覚えた。
こんな身体でも、まだ。




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