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一目惚れ。

それがなまえ先輩を好きになった理由。
中学校に上がる前、四天を見学しに行って先輩と会った。
あの頃はまだ先輩は仏頂面でそれでもカッコよくて、何やキラキラとオーラが出とった。


「みょうじくんっ!」
「んあ? あぁ白石、なん?」
「次のダブルス練習俺とペアやねん。宜しく頼むわ!」
「おー」
「そこの一年ペア! 練習やんでー」


みょうじ、先輩言うんや。
しかも今一年っちゅうことは…一個上か。
しっかり先輩を目に焼き付けとこうと凝視しとったから、飛んできたボールに俺は気付かなかった。

危ないっ! 誰が叫んだか。
ボールはなまえ先輩に一点集中してた俺の頭上に落下してきて、直撃。


「ッ痛! ――……ぁ、」
「すまん、大丈夫やったか」
「っは、はい!」


ふわっと頭に手を乗せられて顔から火が出ているのではと思うぐらい熱い。
まだ誰のものにもなっていないなまえ先輩。先輩。先輩。
記憶の中先輩が俺に触れる。

そうこれは必然やったんや。






「なまえ……」
「んー?」
「キス、したい」
「っふ、……ええよ。こっちき」


たまたま通りかかった空き教室から聞き慣れた声が耳に入ってきた。
両方ともよく知ってる。
止めておけば良いのに半条件反射的に教室を覗いて、後悔。

なまえ先輩と部長のキス現場。
初めは啄むような軽いものだったのに、徐々に深さが増してくそれは心を尖らすには十分なもの。


「ッん……は……っ、ぅ……」
「……蔵、」
「……ぁ、待……っンむ……ふ、……ぁ」


苦しくなったのか部長は頬を紅潮させ逃げるように顔を引く。
でもそれをなまえ先輩が許すはずもなく、後頭部を雑に掴んで引き寄せた。
制止の意思は遮られ意味ある言葉も奪われる。
うっとりとした恍惚な表情。


「(唾液めっちゃ垂らして……やらしい顔)」


憎い。恨めしい。
脳裏に先日の先輩の台詞が木霊して、強く唇を噛み締める。
いつもそうだ。
昔から部長は先輩の横に我が物顔で付き纏って俺の行く手を阻んで邪魔ばかり。


「……っは……ぁ……なまえ、」
「蔵……ヤりたくなった。ヤらせて?」
「あか、ん……も……すぐ授ぎょ、ひ、ッぁ……」
「蔵は俺と居りたないん?」


……そんなわけないやろ、しゃあないなぁ。

部長は嘘吐きや。
なまえ先輩に求められて嬉しいくせに。
初めからヤる気だったくせに。
先輩の艶かしい舌が部長の垂れた唾液を掬い取ったのを契機に二人は早々におっ始めた。


ばちり。
不意になまえ先輩と目が合って思いっきり睨まれる。
先輩から向けられるものは全て気持ち良いのだけれど、この現場が気に食わないのに変わりはない。

まるで俺のものと主張するかの如く部長に噛り付いたなまえ先輩と悲鳴染みた声を上げた部長。
その反った背中を八つ裂きにしたい。
そうすればきっと。




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