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店の人にとったら迷惑以外の何物でもない程のどんちゃん騒ぎ。
財前とのことがあってからの数週間は酒を断っていたのだが。
遂に欲求には敵わなかった。

暫く飲まなかった分を取り戻すというか通り越す勢いで飲み暮れて。
飲み会開始数時間で俺の記憶はぶっ飛んだ。


「なまえさん」


朧気で霞みがかった思考なのに、落ち着き払ったそれでいて熱っぽい声が耳について離れない。






目を覚ますと自身の部屋に居て初めて運ばれたことに気付く。
相も変わらず頭を刺す痛みと耳鳴り、今日はそれにプラス若干の吐き気があった。
横を見れはここ数週間ですっかり居るのが当たり前になった財前。
そしてやはりというか俺も財前も丸裸で。

もーやだ……。


「ん、……なまえ、さ……?」
「おはよーさん、財前」
「……はよ、ございます」


うっすらと開いた目蓋の奥から双眸が俺を捉える。
乾燥した唇が挨拶を吐き出したの同時に揺れた瞳。
哀しそうに見えたのは、気の所為? それとも……?
素直に疑問を口にしようと思ったのだが、財前の台詞に俺は疑問を呑みこむ。


「すんません……ちょお、昨日疲れたんで……も、少し、寝ます、」
「、そか……今日、講義は?」
「午後から……ちゃんと行きますんで、心配せん……で」


言い終わるか終らないか位で再び眠りの彼方へ行った財前。
この遣り取りに少しデジャヴ。

でも、あの時との違和ははっきりとしたもの。
あの時よりも断然疲れてるし、どこか暗い。

そんな財前を置き去りに大学に行く事に少なからず躊躇いを覚えたが大学をサボるわけにもいかず。
後ろ髪が引かれる思いで自宅を後にした。


「はよーさん! って何や。元気ないな自分」
「ん、……眠いねん」


一瞬謙也に相談してみようかと思ったんやけど、解決しなさそうやったから止めにした。
いや、やって間違って財前の耳に入ったら困るし。


「そ? あ!」
「五月蝿っ、……一体何なん」
「自分、ええ加減にカメラ返しや!」
「は? ……ああ、今度持ってくるわ」
「……なまえ、今思い出したやろ」


そんなことあらへんよー、と棒読みに答えて「嘘こけ!」そう叫ぶ謙也を無視した。マジで、カメラの存在忘れててん。
それよりも今は財前の事の方が気になる。



冷えた唇は真実を語らない



飲み会と称したただの馬鹿騒ぎ。
なまえさんを含めた数人の幹事が完全に出来あがった頃合いで解散となった。
当然のように俺は謙也さんと一緒になまえさんを運ぼうとすればあからさまに睨みつけて来る女達。

はっ、なまえさんは渡さへんで。絶対。


なまえさん宅へようやっと運び込めば謙也さんは速攻帰って行った。
浪速のスピードスターは未だ健在っちゅーことか。


「ざぁいぜえーん」
「何すか……、臭っ」
「ふぁはは、さけのんどんのやぁからしゃあないわ!」


にへらーっと絞まりのない顔で言い切られても正直対応に困る。
そんな俺の事はお構いなしにぽいぽいと自身の服を脱いでくなまえさん。
全裸でにじり寄って来るなまえさんに後ずさる俺。


「さあーじぶんもぬぎぃや!」
「ッ、ちょ! どこ触って、」
「おとこどぉしなんやからええやんー」
「そ、ゆも問題じゃ……ッひ」


俺の服を矧ぎ取ろうと這っていた手が胸辺りに到達。
突然の刺激に思わず声が上擦った。……恥ずかしい。
この前の時は何か感じる前に脱がされるという早業を受けたから特に感じなかったのに。


「……かんじとるんー?」
「、やめ……触ん、ッあぅ」
「さわんないわれたらさわりたぁなるやろぉ」


自分が触りやすいようにか後ろに回って再びなまえさんの手が胸を弄る。
耳後ろの薄い皮膜にこの人の熱い吐息とそれに混じる声を感じて。
抵抗するために掴んだ俺の手はただ添えるだけのものへとなり下がった。


「ふ、ぁッ……んん、……ぅ」
「したもらくにしたぁるわあ」


霞みがかった思考でなまえさんの言葉を理解する頃には下は完全に寛げられていた。
はしたなく天を仰ぐ俺のをなまえさんの手が握り込んで。
びくり、震えた手の内のそれと俺の身体になまえさんが小さく笑う。
でろんでろんに酔っ払って舌足らずで酒臭いのに。

なんでこの人はこないにカッコええんやろ。


「あッ……なまえッ、さ……ッんン!」
「……ひかる、かあええ」
「! ぅ、ぁああ……は、んっ……ぅ」


なまえさんの指が先端を擦るたびに女みたいな声が漏れる。
だらしないまでに溢れ出てる先走りがなまえさんの手を汚して、申し訳ない。


「やあ、あ……もッ……ん、イっく」
「……、ええよお……イってまえ」
「あ、んぅッ……、は、い、ッんぁあ!」


ホンマに軽く窪みに爪を立てられて呆気なく俺のは吐精。
床へと撒き散らした白濁とした体液に羞恥が一気に込み上げてくる。
しかも最悪なことになまえさんは俺に凭れたまま眠りの彼方へと旅立っていた。

きっと起きたら今の出来事なんか忘れているのだろう。
この酔っ払い節操無し。




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