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『……ふ、ぁ、ああ! んぅ、はっ……あぅ』
『蔵、ッ……は、』
「……ホンマ、最低な人」
『なまえッ、ぁ……ん、気持ち……えっ、あぁあ!』


耳にかけたヘッドホンから引切り無しに上がる嬌声。
あんたが騒ぐから先輩の声が聞こえへんやないか。

性行為中独特の掠れてエロさをふんだんに盛り込んだ低音ボイス。
低音と高音とを比べるとやはり高音の方が良く聞こえるわけで。
もっぱら無機質なこの機械を媒介として聞こえるのは聞きたくもない白石部長の喘ぎ声。

カチリ、音量を上げるアイコンをクリックして耳に意識を集中した。
耳障りな雑音は全てシャットアウトして、ただひたすらに先輩の声だけを掬い取る。


『…今…日は、ッ感度ええやん……っ』
『やって、なまえッが……ッひぁ、は、んぅ』
『俺が、何やの……蔵、はっきり言わな分からんで?』


ああああ、先輩の声めっちゃ下半身にくる。カッコええ。エロい。
きっと今あの綺麗ですべすべな先輩の親指が唇をなぞったんやろな。
そしたら恍惚とした表情で薄く唇を開いて、微笑んだ先輩にキスしてもろて。
“好き”て囁くんや。

……ええなあ。部長ばっか、ずるい。
先輩らの声をBGMに自身の手で自分のものを扱う。


『――――ん、やもんっ……! ぁ、も、恥ずかしッ……』
「っふ、ぁ……なまえ先、ぱっ……んん」
『……っふ、かわええ奴……ほな、しっかり啼きぃや』
「! っは、ぃ……ァ、は……っふぁ」
『ん、ぁあ! なまえ、ッなまえ……もっ、とぉ、ひ、っんぁああ!!』


ちょ、こんな時まで邪魔すんなや。
音割れが起きたのではと思うほどの声に一瞬鼓膜が破れるかと思った。
つか声でか過ぎ、あんたの声なんぞ聞きたないねん。

それよりも先輩もっと喋ったって、俺を煽ったって。
先輩の声で感じたい。イきたい。


「はぁ……ん、……っぁあ、……ンッ!」
『っ、は……やらし』
「! あッ、や、……先ぱ、もっ、アカ……ふぁ、ぁ、あ!!」


ぼたぼたと俺の腹と手を汚した液体は重力に従って床をも汚した。
機械の向こう側ではまだ行為は続いとって、部長が啼いてる。
本当は直接抱いてもらいたいんやけど、今はまだ我慢我慢。
あの人には部活で世話になっとるし。
ああ、ほんっと俺って健気でええ後輩や。


『ッなまえ! イっちゃ、ぁ……んンッ、は、っぁ!』
『ンッ、俺も……中に出すでっ』
『おん、ッおん! はぁ、出してっ……ふ、あぁ……ぁ、ぁああ!!』


でもやっぱり。
狡い、狡いズルイずるい!


『……くら……どこにも行かんで……?』
『おん……当たり前や、』


先輩は部長のこと1mmも見てへんのに。
弱った隙間を巧みに突いて、今の地位をまんまとせしめて。
せこい。

……。
さっきまでもう少し我慢しとこ思たけど、やっぱ止めた。




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