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全国大会が終わってから初めての部活が休みの日。
機嫌が良かったらしいなまえの了承を得て今、なまえ宅にお邪魔している。
入って直ぐ辺りを目配りしたがどこにも荒れた形跡は見当たらなくそっと胸を撫で下ろした。


「蔵ぁー……」


一緒にテレビを眺めていたら猫が擦り寄る様に後ろから抱きすくめてきたなまえ。
その声に冷たさはなく取り敢えず暴力はしてこなさそうだ。
とそこまで考えて、無意識に安堵してる自分が居って驚いた。
違う。
それじゃ駄目なんや。


「なん? ……っあ、どっか痛むん!?」


慌てて振り向こうとした俺をなまえは巧みに腕を使って阻止する。
耳元付近で漏れた吐息には苦笑が交じっていた。


「そゆわけちゃう。……でも、ありがとな」


耳を凝らさなければ聞き取れない位の声量による発話。
しかも感謝の言葉を口にするなんて…本当に今日はどしたんやろ。


「そ、か……。なら……ええ、ねん」


俺が分かることなんてほんのごく一部の表面上なものだけ。
なまえは滅多に思ってることを言ってこないから俺が読み取らなあかんのに。
今だって、どうして唐突にこんな行動を取ってきたのか皆目見当も付かない。

もしかしたらなまえは読み取られるのを望んではいないかもしれん。
けど俺は知りたいと思うし、察したい。
察して、支えたい。


「、なまえ」
「んー……? どした」
「俺が、ずっと傍に居ったる……」


後ろから回された手に俺の両手を重ね合わせてぎゅっと握る。
服越し伝わるなまえの身体は温かいのに、手だけは異常に冷えていて。
このまま俺の熱を奪ってくれたら良いのに。
何なら全てでも良い。


「……蔵、」


俺の言葉が良い方に働いたか悪い方に働いたかも分からん。
こんなにも近くに居るのに、俺は何も分かってやれないことが歯痒くて悔しい。
こんな時彼女さんやったらきっと分かるに違いない。
…あの彼女さんなら。


「……ずっと、?」
「なまえ……?」
「ずっと、居ってくれるん……?」


俺らの目の前にあるテレビが一際大きく色めきだって、どっと笑いが鳴る。
その明朗さとは相反してこの部屋は緊張に包まれていた。

きっと彼女さんのことと重ね合わせてるんや。
離さない様に抱き締める腕を強めたのも、不安気に眉を垂らすのも、今にも泣きそうなのも、全部全部。
彼女さんがなまえの元から居らんくなったから。


「せや、ずっと……ずっとや」
「っ、……! 蔵、……蔵、くらッ」
「なまえ、俺は……俺は、居なくならんよ」


なんて、汚い。
人の弱みに付け込むなんて最低な奴がすること。
そんなこと知っている。
それでも俺は。


「、ずっと……傍に居ったって……っ!」


なまえの恋人になりたかった。




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