short | ナノ
(ボカロ×テニス/のぼる↑/ショットガン・ラヴァーズ/sm12424787)




疲れた身体を引き摺って帰宅した明け方。
いつもの習慣で郵便受けを覗いて、入っていたのは小洒落た一枚の白い封筒。
差出人にぼんやりと見覚えがあるものの、どこで知り得たのか判然としない。

とにかく今は眠いのだ。
やはり自宅のベッドが一番安らぐ、と。
ぼふ、服装をそのままにベッドへ倒れ込んで気絶したように微唾む。
その封筒が四天宝寺中の同窓会への案内状と知るのは陽が真上を通過して暫く経ってからだった。


「(、同窓会……あいつも、来るんやろか)」


最後に会ってから5年近く経っているというのに、色褪せることなく思い起こせるとある人物の顔。
彼の顔を思い出すだけでじわりと胸が熱くなった。
それは急にやってきたもう何十回目かも判らないラヴソングのような甘い囁き。

中学3年の頃の同級生。好いていた。そう過去形。

過去形にすればそれは淡く綺麗に輝くのだ。
けれど、何故か身体中が呼んでいる。“    ”と“  ”と。
その衝動は到底抗い難く、衝動に任せたい、そう思ってしまったのが始まりだったのかもしれない。



***



大阪市内の某ホテル。
そこの大ホールを貸し切って大勢の元四天宝寺生が集っていた。
勿論、白石も例外ではない。正装でありながら略装に近い装い。

そのなんとも曖昧な装いは様になってはいるのだが、白石を知る者には違和感であった。
現に2、3年時同級生であった数人に首を傾げられている。
当の本人は全くといって良い程気にした素振りはしなかったけれど。


「白石、やんな……?」
「おおケンヤ。何寝惚けたこと言ってんねん、当たり前やろ」
「せやかて……自分、変わったなあ」
「……そか? ま、成人式以来やから――5年? も経てば少しぐらい変わるやろ」


謙也は未だ腹に据えかねているようであったが、そこは中学来の有無を言わさない笑みで制す。
そうすれば、渋々ながらもその話から身を引くのだ。
こいつは変わらへんなあ、そうどこかで安堵している自分が居た。


「白石、忍足、久し振り」
「!」
「おーみょうじ、久し振りやな! 元気しとったか?」
「ああ、そこそこ。ま、最近仕事が詰まってて寝てないんだけどな」
「……そういうんは元気て言わんのやで」


白石をそっちのけで会話を進める二人を食い入るように見つめる白石。
その眼差しはそこはかとなく熱を孕んでいる。
一意に向けられる視線はみょうじにだけ注がれていて。
みょうじはみょうじでその視線へは一瞥くれただけで受け流していた。


「食事と睡眠は欠かしたらあか、「忍足くん、ちょっと……ええかな」へあ?」
「どーぞどーぞ、遠慮なく持ってったってや」
「ちょ、何でお前が答えんねん!」
「まあまあ……彼女も話したいだろうし、行って来いよ」


仄かに頬を赤らめてる女に付いて行く後姿を無言で見送り、今夜の三次会は無理そうだと結論付ける。
女は上目と伏せ目と手付きを巧みに用いて妖艶に、誘っていた。
あの謙也の反応からすると一次会まで居たとして、きっとそのままその他大勢とは別ルートになるだろう。

更に周りを見渡すと、昔の部活仲間は大半が女に捉まっていて。
どうせ今夜もどこかで鳴り響くのだろう。
闇の中で秘めやかに交わる愛のシンフォニーが。
最も、“愛”と呼ぶには些か欲に塗れ過ぎているけれど。


「――――……なあ、」
「……何」
「俺達も、してみよか……?」


するり、色仕掛けに奮闘している女のような動きでさり気無くみょうじの手を取る。
少し骨張っていて、硬い手指。若干体温が低いのもまた良い。
この手で余すとこなく触れて欲しくて、何も考えられなくなる位に感じたくて。

出来ることなら今直ぐにでも連れ出して欲しい、と。

艶やかに囁いた。
そして、少しばかり顰められた眉は了承の証だ。



***





「――――っあ、! ……ぁ、ぁ……ふ、……ッんん」
「……ッ、……っは」
「や、っ……はげしッ……ッァ、ぁ、ゃ……あか、ん――……ぁッ!」


余裕をなくし猛然と出し入れを繰り返されて、白石は高まる快感に逆らわず。
行為としての絶好の瞬間をここに、と言わんばかりに中を締め上げた。
みょうじの熱いショットガンのような攻撃的なそれで、中を埋め尽くして欲しい。

それまで絶対に離さない、そう想いを込めて。
絶対に伝わらないと知りながら、涙で霞む視界でほくそ笑んだ。



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