short | ナノ
俺の一日は可愛い恋人兼後輩を起こすところから始まる。
朝練には余裕で間に合う時間に失礼ながら自宅を訪問。
ちなみに言うと俺はテニス部ではない。



***




「何で起こしてくれないんすか!」
「……ごめんな?」
「ったく! 間に合ったからええからに……」


結局いつもの如く光は起きられず。
朝練が始まるギリギリの時間に部室に到着するのもやっぱり日常。
未だぷりぷりしながら部室に入ってった光と入れ替わりに出て来た謙也に手招きされる。
頭上に疑問符を飛ばしながら近付けばぐいっと肩を掴まれてコートの隅に連れてかれた。


「謙也? 何なん」
「お前いつもあない怒鳴られとるけど、ホンマに付き合うとるん?」
「当たり前やん」
「あれで!? え? ホンマに!?」


あまりの声の大きさに思わず耳を塞いで「五月蝿いわ」と呟く。
まあ、謙也が驚くのも無理ないとは思うけどな。
傍から見たら常に俺が怒られてるだけにしか見えへんようやし。


「あれで結構かわええとこあるんやで?」
「想像出来ひん」
「お前……仮にも人の恋人を」
「やって!! あのどこがかw「なまえさん!」


驚きを継続した謙也の目が丸くなったのを見た瞬間首根っこを掴まれる。
大して強くはない力だったけれど軽く首は絞まった。
けほっと咳込んで振り向けば、あからさまに怒ってますと言った表情で睨んでくる光。
その背後では既にテニス部の朝練が始まっている。


「ここに居るん練習の邪魔や。そこの人も返して下さい」
「そこの人て、お前っ」
「ああ、堪忍。さっさと退散すっから、練習頑張りや」
「うっさい。アンタに言われんでも分かっとりますわ、アホ」


恐らく謙也達にもこんな不躾な態度は取らないだろうに。
俺らの会話を聞いてた蔵も信じられないような顔をしていた。
さっきの謙也よろしく今度は蔵に手招きされる。


「なんー」
「自分、財前と付き合うてるんやったよな?」
「お前も謙也と同じこと言うんか」
「だっていつも怒鳴っとるし、全然付き合うとるようには見えへんよ」
「いや、だからああ見えてk「なまえさん!!」


いつになく怒りを含んだ声は普段からは考えられない位大きい。
呼ばれたからには応えないわけにはいかないと背後を見やって吃驚する。


「邪魔、言うたやん……っ!」
「え、あの……財前……?」
「何でッ……言う通りに、せんのや! こ、の……浮気者―!!」


瞳にこれでもかってほど涙を溜めて自棄糞に叫んで光は走り去った。
光の豹変振りに謙也も蔵も呆然としている。
最後の捨て台詞から察するにきっと謙也達と話してるのが気に喰わなかったのだろう。



「ほら、かわええとこあるやん」



と俺が誇らしげに言うたれば実に阿呆面な二人と直面した。




少年AとBの恋愛事情
-他人の理解する範疇に在らず-



(きつくなるのは相手が俺だから)


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