short | ナノ
キュ、蛇口のコックを捻り勢いよく流れ出る流水。
それを頭から被って全身の熱が一気に冷めるようだ。


「ふー……」
「ほい」
「サンキュ……ん?」


タイミング良くタオルが聞き慣れた声とともに渡される。
横で自身と同じ様に水浴びをし始めた金髪。
何気無しに受け取ったものの、思わぬ人物の登場になまえは驚きを隠せない。


「謙也、」
「んー?」
「何で居るん? 部活はどないしたん」


顔を拭き終えたタオルを首にかけ、なまえは流しの淵に腰かけた。
水分を含んで整えられていた金髪がみるみるうちに質量を減らして。
眩しそうになまえは目を細める。


「今日は自主練や自主練」
「あぁ……ほれ」
「おおきに」


自分にしてもらったように、と未使用のタオルを手渡す。
そして謙也もそれを当然の様に受け取った。


「自主練で走り込みか」
「浪速のスピードスターやからな!」
「関係あらへんわ」


なまえの手が乱雑に謙也の金髪をタオル越しに撫でて水分を飛ばす。
その姿はまるで親が子供にする行動そのもので。
互いにその行為に違和感はないようだ。


「しかも俺の方が速いっちゅーねん」
「何やと!? いくらなまえでもそこだけは譲らへんで!」


最後にべしっと頭頂部を一回叩くと小さく鼻で笑い飛ばす。
その態度に謙也は過敏に反応を示した。
それは良く言えば律儀、悪く言えば餓鬼。
互いの唇が挑発的に歪んで。


「ほーう……ならいっちょ勝負すっか?」
「挑むところや!」


子供染みた勝負が今始まった。
走る道筋を確りと見据えて構える。
後5秒、4時40分。
学校のチャイムを開始の合図代わりに、同時に土を踏み締めて駆け出した。

頬に触れて流れる風。
湿っていた髪から拭い切れなかったために滴る水滴。
同じ距離と速さを保つ二人。

謙也もなまえもさっきとは打って変わって満足気に笑っていた。



***



終わりの位置を決めずに走り始めたにもかかわらず、減速する場所はほぼ同時。
完全に失速し両膝に両手を置けば、肩を大きく揺らし荒れた呼気を整える。


「……っは、中々……やるっやん」
「お前っも、な……ッ」


息も絶え絶えにTシャツの襟元で口付近を拭っていたなまえ。
何気無くその横顔を見た謙也は弾かれたように明後日の方を向く。
その頬は赤い。
だから、なまえが謙也を見つめていたなんて知るよしもなかった。




同音同色
-所謂頭ン中は同じ-



((エロいわー……))


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