short | ナノ


「ほら、池田がご立腹だぜ」
「えー? だってあれ事実だろー?」
「事実でも書いて良いことと悪いことがあるじゃろ」


「トイレに落書きなんてッ、今時小学生でもやらないぞ!!」


「……っぶは! 便所の落書きに一々目くじら立てんなよなー」
「"池田は実は童貞(笑)"……っははは! やっぱ傑作だろい」
「っくく……おとといきやがれPTA、っての」


遠くで吠える池内。それを眺めて笑う俺ら。
だって、これが生きがいってやつじゃねーの?
あんたらみたいなハンパな大人が俺らみたいなクソガキけなすのとさ。
同じだって。いや、マジで。

ゲラゲラ笑ってたら俺達に気付いたらしい池内が鬼の形相でにじり寄って来た。
でも真田の方が怖いな。いや、幸村の方が怖いな。うん。


「お前達か! あのトイレの落書きは……ッ!!」
「はあ? いちゃもん付けないでくれますー?」
「俺らがやったって証拠でもあんのかよい」
「それよりトイレの落書きのどこが悪いんか教えてくれんかの、池田さーん」
「〜〜〜〜ッ、お前ら! あんなことをして……っ咎めなしだと思うなよ……!」


顔を真っ赤にして唾を飛ばして、まさに怒り心頭。
怒りに我を忘れているらしく、何が悪いのかハッキリしない。
というより、正直言ってこいつ自身もわかってないだろう。


落書きをしたから怒っている、ではなく。

落書かれた内容に怒っている、なのに。


当の本人はその怒りのあまりに本質を見失っているのだ。
だって激怒憤怒しているから。
飽きもせずがみがみと、勝手な自論を押しつけんじゃねーよ。
論点がずれた主張がじれったい上にホントうざったい。てか、やかましいわ。

一向に止む気配のない言葉の羅列にプツンと。
音が鳴った。その音が俺らを纏う空気を振るわせた。
俺らの我慢にも限度ってもんがあるんだぜ?


「……ちょっとさー黙ってろ、PTA」
「……ギャーギャー騒ぐなって、PTA」
「……ムキになるんじゃなかよ、PTA」


「「「ひっこんでろ、PTA」」」


突然の俺達の言動に言葉を失う池内。
その表情といったら傑作もんだった。あー見せられないのが残念で仕方ない。
問題児なめんなよ。
今更教師のお咎めなんぞに屈するなんて思ったら大間違いだぜ。

あれがダメだとか、これがダメだとかよくまー考えつくもんだ。
ホントそういう粗探し好きだよな。
つーかそこに心骨注ぎ過ぎ。無駄な努力乙。


「確かに制限かけたらさー、あれもできないし?これもできないし? あんたらにしたら良いことかもしんないけどー」
「でもよ、やるなって言われりゃ……余計にあれもやりたいし?これもやりたいし?」
「っちゅーか、正々堂々やったるき」
「そういう規制が逆効果だって早く気付けば良いのにさー」
「ホントあんたらハンパな大人って頭悪いよな」
「もっと頭使いんしゃい。足りない脳味噌言うてもネズミよりは入っとるんじゃから、一応」


にたり。
多分俺達の表情を表現するならこれが一番適切だろう。
それほどまでに意地の悪い表情をしている。
これは想像ではなく確信。
視界に入っている二人がそういう顔付きをしている。ならば俺も例外ではない。

いつの間にか周りには生徒のギャラリーが出来ていて。
池内の味方は誰も居なかった。
笑わせる。
怒りに我を忘れた奴は今頃になって自身の状況を把握したようで。
じり、一歩後退した。


「好きにやらせろ、好きに笑わせろ」
「文句があんならかかってこい」
「受けて立つぜよ」


俺、丸井、仁王。
順々に淡々と言葉が空気を振動させて。




「「「とっととくたばれ、PTA」」」




俺は中指を立て丸井は舌を出し、仁王は親指を下に向けた。
そして、歓声拍手喝采の中。
池内は転がるようにギャラリーを掻き分けて消えた。


ごめんあそばせ? PTAの池内さん。




くたばれPTA
-Fuck you!-



(あーすっきりした)
(だな)
(俺らを甘くみた罰が当たったのう)
(((ただ大人しく言われてるだけだと思ったら大間違いだっての)))


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