short | ナノ
(ボカロ×テニス/梨本P/くたばれPTA/sm10851396)




本日は無風の晴天。
今日もまた変わらない波乱万丈で平凡な日常が始まります。




「ふぁっきゅー!!」




待ちに待った昼休み。
いつもの様にプリガム二人と学食へ行った帰りの最中。
俺はそう口走った。


「……行き成り何だよ」
「とうとう頭でも沸いたナリか」
「ちげーし! これはだなあ、」


会話の途中に発したためか二人揃って変なものでも見るような視線を投げてきた。
だがしかし!そんな視線にへこたれる俺ではないのだ。
丸井が食っていたポッキーを一本拝借し、抗議する奴を無視して口を開く。


「俺の主張だ!」
「「……」」


しん。

俺の言葉にここだけ空気が冷たくなる。
あれ。何か変なこと言ったっけ。
相変わらず残念なものを見るような眼差しは変わらず。


「におー今日の5限って何だっけ」
「現国ぜよ」
「げ……かったりい」
「……俺、木ノ下嫌いなんだよなー」
「あー……木ノ下はおまんのこと目の敵にしとるからの」
「大体告げ口とか……大人がくだらねーことするなって話」


丸井が話題を逸らした。
別に気にはしない。いつものことだからな。
それよりも、5限が現国という事実の方が重大だ。

あの教師は俺が嫌いだ。だから俺もあいつは嫌いだ。
でも、一番嫌いな奴は別に居る。


「自業自得だろい」
「ま、そうじゃの」
「ええー……木ノ下もだけど心の狭いあいつが悪いんだって」


木ノ下。俺ら3-B担当の現国教師。
定年間近のじいさんで立海随一の堅物教師。
奴は従順で品行方正な生徒が大好きだ。
だから俺は毛嫌いされている。


「いやいや、悪乗りするお前に非があるって」
「お前らだってその悪乗りに便乗してるくせに!」
「みょうじが悪目立ちしちょるけん。俺らは目立たん」
「お、噂をすれば……その心の狭い奴が来たぜ」


そして、その堅物教師に告げ口をしているのは心の狭いPTAの役員。
現在進行形でこっちに向かって来ている奴。
名前は確か。


「げ……池田」
「ッ池内だ! それよりも、大人に向かって呼び捨てとはどういう了見だ」
「すんませーん」
「誠意が感じられないッ。しかも、お前はまだその格好を改めてないのか!」
「……だってー池田さん以外からは特に何も言われないんで」


ひくり。
池内の口角が不自然に歪む。
俺が池田と呼ぶのも金髪の赤メッシュにピアスじゃらじゃらという格好を改めないのも全部確信犯。

だって、やりたいんだから。仕方ないと思う。

髪染めもピアスも指定外ベストも呼び捨ても溜め口も悪戯もゲームや漫画の持込も全部全部、やりたくなること。
でも、それはいけないと言われることばかり。


「つーか、どーしてダメなんすか」
「校風が乱れると何度も何度も言っている」
「校風の、どこらへんが?」
「ッ、口の減らない奴だ……!」


どこがどうダメなのか。たずねてもわかりません。
だっていつも明確な解答が得られたことがないんだから。
はっきりとした答えもなしに、ただひたすら頭ごなしに言われたって直す気になるはずもない。

若くてごめんさないね。反抗期でごめんなさいね。
ま、改める気なんてさらさらないけど。
とその時、後ろに立っていた二人がずいっと前に出てきた。


「じゃけん、あんたらも厳しすぎやせんかの」
「もう少し生徒を信用してやったら? したらもっと色々変わると思うんだけど」
「そーそー」
「……五月蝿い! みょうじだけじゃない、丸井に仁王も! もっと周りの奴らを見習え!」
「うわ、飛び火したし」
「話の分からん奴ぜよ」
「っていうか、みんなが言ういいコなんかになれないし」
「なりたくもないダニ」
「諦めろい」


わなわなと震え出した池内に「ヤバい」と直感的に思った。
それは丸井も仁王も同じだったようで。
ばっと目配せをして、蜘蛛の子を散らすようにその場を駆け出す。
運動部の脚力なめんな。
みるみるうちに遠ざかる池内の喚き散らす姿を横目に俺らは大爆笑。


「あれがダメだとか、これがダメだとか。よくまー考えつくもんだ! なあ、丸井! 仁王!」
「ああ! 常識きどって、ふんぞり返んなっての!」
「とっととくたばりんしゃいPTA!」


中指を立てる俺と舌を出す丸井、そして親指を下に向けた仁王。
走り抜ける廊下に俺ら三人の笑い声は良く響いた。
あー…もしかしたらまた真田から鉄拳制裁が落ちるかもな。
あいつも堅物だし。したら、こいつらも道連れにするだけだけどさ!



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