そしてそれを笑ってやり過ごす俺はこの1年で随分スルースキルが上がったと思う。
「小春ぅぅううッ!!」
「ユウくーんv」
今日は地元の中学校との練習試合だったようだ。
ところでテニス部でもない俺が何でこの場に居るかというと、ユウジに昨日の夜突然何の説明も無しにただ「学校に来い」と言われたからである。
指定された時間に行けば既に練習試合は始まっていて、何故か白石に今日の説明を受けた。
ちなみに俺をここに呼んだ張本人てあるユウジとは一言も喋ってません。
着いた時には小春と何やら密会をしていた上、現在進行形で二人はコート内だ。
しかも抱擁中という。
まあこれがネタだとは理解しているつもりだし小春とは幼馴染みだし。
快くないのは確かだけれど、最早今更という気持ちの方が強い。
流石に小春以外の奴だったら怒るけど。
「二人ともお疲れさん。ほれ、タオル」
「あらなまえちゃん、ありがと!」
「……おう」
笑顔で受け取る小春に仏頂面で受け取るユウジ。
対照的過ぎて笑えて来る。
可笑しいなあ、俺達付き合うてるはずなんやけど。
込み上げてくる笑いを何とか押し込めて、コートへ視線を向ければ忍足・財前ペアの試合だった。
あいつらも色々と真逆で、そのくせあれはあれで良いコンビだったり。
とか何とか考えながら漠然とコートを見てたら隣に立っていた小春が突然「ロックオーン!」と言い出す。
目線の先には他学校の選手。
……うん、今の小春の台詞にユウジの目が光ったんですが。
「小春浮気かっ! 死なすど!!」
「いやんvユウくん物騒やわぁ」
「小春ーどの子?」
「っなまえ?!」
「ほらっ、あの真ん中のカワイイ子v」
指を指した(良い子は真似しないよーに)子は確かに男子にしては可愛らしい顔をしていた。
色々とその(小春曰く)可愛い男子についての考察を聞き流して、適当に頷く。
「あーせやなー」と取り敢えず肯定はしておくが正直どうでも良い。
だってユウジの方がかわええし。
なんて本人に言ったら殴られそうなことを考えつつユウジを見やったら、何か肩が小刻みに震えてる。
「……か、……ッ」
「……ん? ユウジ?」
「ユウくん?」
口の中でぼそりと呟かれた言葉は俺らの耳には届かない。
ユウジの様子を不思議に感じたのか小春も怪訝そうな表情だ。
何を言ったのか知るべく再度聞き返して、ユウジの肩に触れたら間髪入れず弾かれた。
「わっ、……ユウジ?」
「……う、浮気かぁ! そんなんッ許さんでえぇええ!!」
顔を伏せたまま人目を憚らず叫んだ台詞は小春に向けている時よりもずっと感情が籠っていた。
不意打ちクラッシュ
-破壊力満点-
(若干涙声とか……え、ちょ鼻血出る……ッ)
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