意気揚々と話を続ける白石。
俺の不愉快さは微塵も理解していない。だって。
「でな、ホンマ佐々木さんて優しいんよ」
「……気が利くしな」
「せや!あー自分委員会一緒とか羨ましいわ」
白石は絶賛とある女子に片想い中。
ホンマ楽しそうな顔をして、その想いを受けている女子が俺は羨ましい。
確かに彼女は良い子だから本来なら全力で応援するところだろう。
でもそれは俺が白石に恋心を抱いてなければの話であって。
「で、告るん?」
「せやなぁ……」
「当たって砕けたらええやん」
「せやなぁ……て、いやいやいや砕けたらあかんやろ!」
笑顔を向けられているのに、虚しい。
白石にとって俺はあくまでも友人Aでしかなくて。
なまえやから言うけどな、なんて言われた時は本気で嬉しかった。
それもその話の内容にドン底まで突き落とされたけども。
「でもまあ……何もせんで後悔するよりかはええか」
喉の奥で小さく笑う白石はそこらの女子よりも断然綺麗で、独り占めしたくなる。
告白して、その言葉通り当たって砕ければ良いのに。
白石が誰かの横で特別な表情を浮かべるなんて俺には耐えられない。
「そうそう」
「よし決めた。今度告白したるわ」
「フラれたら慰めたるでー」
「ははっ、そこは嘘でも応援するとこやろ」
何で慰めるが先にくんねん、また浮かべた笑みはやっぱ爽やか。
辛うじて笑みを白石に返すも俺は表情が引き攣ってないことを祈るばかり。
そして心の中で「ごめん」の一言を口にして、この日は別れた。
***
「フラれた」
ある日の放課後。
突然教室から連れ出されて開口一番そう告げられる。
佐々木さんなまえが好きなんやて、努めて普段の声質を心掛けてでも失敗していた。
かける言葉も見付からない俺は黙したまま次第に白石の表情が崩れ出す。
「……しらいし」
「ッ、堪忍……っちょ、ショックで……!」
「……ええよ、好きなだけ八つ当たり」
次から次へと頬を濡らす白石は俺の言葉に更に顔を歪め、胸に顔を埋めて嗚咽を漏らした。
時折胸を叩く痛みをやり過ごしてやはり「ごめん」と心の中で呟く。
白石がフラれて安心したなんて。
白石が泣き付いてきてくれて嬉しいだなんて。
こんな感情間違ってでも彼には見せられない。
「っ、何で……自分や、ねんッ」
俺もそう思うで。
好きな奴がフラれて喜ぶような最低な奴、好きになるんて案外彼女も見る目ないんやな。
その果実は失楽園に実る
-届くには程遠い-
(ああでも、やっぱ白石は笑ってた方がええ)
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