short | ナノ

「……っん……なまえさ、ん……っ……、は……」
『! わ、わかし……ッ』
「俺ッ、ここでヌきます……だから、なまえさんも……ヌいてくださ、ぁ……!」
『〜〜〜〜ッ、ああもう! 全く、敵わねーな……若が煽ったんだからな?』
「っは、い……分かって、ま、す……ン、っ」


一度スイッチが入ったら中々止まってくれないのが目下の悩みの種だ。
なまえさんとの最中もそれで何度後悔したことか。
きっと、今の行為も終わってしまえば羞恥と後悔に苛まれるのは必須。

でも、口も手も意に反したまま。
寧ろ手に関しては大胆になっていく一方だった。


「ぁ、んん……、っく……ふ、ぁ、っぅ……」
『……やっぱ若の声好きだわー……だから、もっと聞かせて……?』
「! っゃ、気持ち悪、いで……っしょ、う……ん、ぅ」
『若』
「ッふぁ、! ……や、ずるい、ぁ……、ん、あ、っはあ……」


優しく窘めるような声音が麻痺し始めた脳内に響く。
携帯を媒体としているから若干声質は異なるのだけれど。
脳内補正が著しい。

ほとんどの機能はその動作を停止しているというのに。
快楽に繋がる回路だけは活発に。寧ろより活動的に。働いている。

右手の手の平越しに伝わる熱と硬さ。
なまえさんの手付きを真似して裏筋をなぞれば腰が跳ねる。
思い立ったように先端の窪みに爪を立てれば背が反った。
段々と声も抑えられなくなってきて。

恥ずかしい。でも、それ以上に気持ちが良い。


「あ、あッ……なまえっさ、ん……! も、出ッる……でちゃ、……ぁ、ッんぅ……」
『んー……あ! 若、待って』
「! ッ、……な、で……んん」


突然告げられた待ての言葉。
それに素直に従って弄っていた自身の根本を握り込む。
ぐるぐると逆流する感覚に腰が揺らめいて、なまえさんのしたいことが分からない。


『前だけだと、物足りないでしょ?』
「そ、なこと……っ……」


ひくり。
久し振りの感覚に目を見開く。
信じられないことに、なまえさんに言われて意識を向けた途端奥が疼き出したのだ。
さっきまで微塵も反応していなかったくせに。
というか、なまえさんが言わなかったら前を弄って終わりだったはずで。


「ッぁ、や、……意地、悪いッ……っは、ぅ……く、」
『な、若……後ろも弄って見せて』
「……――仕方、ない……です、っね……ぁ、ふ」


左手に持っていた携帯を肩で挟んで、右手は吐精を妨げたまま。
左手がそろりと異種用途をすべく後ろ孔に向かう。
シーツに溜まりを作っていた精液を掬って、入口を和らげるように弄った。
鼻から抜ける自身の声や従順に後ろを弄る自身の姿に自嘲。

この人の前ではプライドから何から全部、かなぐり捨てざるを得ない。
そうさせる何かがなまえさんには、在る。


『若のことだから、今日までヤってなかっただろ? ゆっくりで良いから解して』
「……っん、ふ……ぁ、ッや……! あ、ッなまえさん……は、っん……なまえ、ッさ、ああっ!」
『……若、可愛い』


ほう、と携帯越しに伝わる吐息に後ろがひくつく。
それをどうにかしようと必死になまえさんの手付きを思い起こして、ぐるりと中を一周。
偶然触れたある一点に腰と声が跳ね上がって。
電話の向こうから含み笑いが聞こえた。
その声にただでさえ赤みを帯びていたであろう顔がもっと熱くなる。


「っひ、あッ、……ん、ぁ! ……ああっ、あ、やッぁ、」


指一本では物足りなくて、二本三本と既に中に入れていた指に添えて侵入させた。
ほら、まただ。また、自身で制御が利かなくなってきている。
唯一残っている自制心は自身の戒めを解かないことに手一杯で。

ぐちゃぐちゃと音を立てながら自分の指が出し入れを繰り返す。はしたない。
それを脳内が勝手になまえさんの指に変換する。
そうなれば、飛躍的に高まる感度。もう、限界だった。


「や、なまえッさん……っは、あ!」
『……は、……若、そろそろイける……?』
「っん、も……イきた、ッ……なまえさ、っあ、ふ」
『っもう、我慢しなくて良いよ。……若は良い子、だね』
「! ッァ、や、ばか……ッあ、あああ、っ―――…ッ!!」


盛大に精液をシーツに捲き散らかしてしまった。
その量が自分自身でも引くぐらいで、しかも荒い呼吸が中々整わない。
倦怠感も相当なものだ。

これは、なまえさんとする前に更にもう一度出しておかないと危険かもしれない。
無意識の欲求不満でいつも以上に抑えが利かない可能性が大いにある。


『……っあー……久々だと、クるなー』
「……、なまえさん」
『ん? なに』
「……何でも、ありません」
『はは、来週にはちゃんと帰るから。延長とかないし』


それに、若が待ってるからね。
囁くように、声を潜められて。危うく声が漏れそうになった。本当心臓に悪い。




融解心理
-どろり、どろりとそれは蕩ける-



(切れた携帯を握り締めて1週間耐え抜いた)


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