short | ナノ
夏の蒸し暑い夜中。
じとりとした空気が肌を不快にする中、俺達は身体を重ねる。


「っぁ、……んは、ぁ」


与えられる刺激に耐えるようになまえの傷んだ髪を掴んで、なまえが目を細めた。
痛かったんやろか。
そう思って両手から力を抜いてみたがその気遣いも結局は数秒の事。
ゆっくりと舐っていた胸の突起を不意に甘噛みされて、背中は反り再び髪を引っ張ってしまった。


「……白石、ほんと噛まれるの好きだよね」
「やっ、て……ぁ……気持ち、ぇ……ぁあッ!」


暗闇に慣れた目でなまえを見やれば喉の奥で小さく笑った顔とぶつかる。
かっこええな…。
形の良い薄い唇がぷっくりと赤く染め上がったそれに吸い付いて。
固い歯が不規則に先端を掠められれば俺に快感をやり過ごす手段はない。


「う、ぁあ……ッん、なまえっ、なまえ……ぁッ」
「んー……?」
「あっ、ン! 好、き……やぁ、は、あ……!」


"好き"その単語に今まで決して止むことのなかった愛撫が止まった。
散々弄られた身体は次の刺激を期待して疼く。
じわじわと中心から身体の芯にかけて這い上がるもどかしさ。
その感覚に身を捩らすも上に被さるなまえは行為を再開する素振りはない。


「……は、なまえ……? ッどした、ん……」
「ねぇ……"好き"と"愛してる"の違いって、何?」
「ぇ、いきなり……なん」
「この行為にその違いは関係ある?」


行為を止めてしまえば温く湿った空気は不快なだけ。
自然と寄った眉間になまえが気分を害した様子はなくただじっと俺を見つめていた。


「俺は白石のこと"嫌い"じゃない」
「……おん」
「でも"好き"かと聞かれたら分からないとしか言い様がないし、"愛してる"も同じなんだ」


ひどく申し訳なさそうに「ごめん……」と呟いて大きな手の平が俺の髪を撫で付ける。
焦れた身体は熱いのに頭の中だけが切り離された様に冷えていた。
"好"と"愛"。


「謝らんでええよ」
「……でも、」
「俺はななまえ、"好き"と"愛してる"の違いを明確には説明出来ん」


恐らくそれら二つは似て非なるもの。
=ではないし≒でもない。
表すならばそれは≠。

頭上に触れていたなまえの右手を取って、お互いに少し体温が下がっていた。




「せやけど、違いは関係あると思とるよ」



ピクリと動いた指に自身の指を絡めてそっと引き寄せれば、存外なまえは抵抗を見せなかった。
そう、吐き出した相槌は悲しいものに聞こえて堪らずなまえの背を優しく撫でる。


「だから……これから知ってけばええねん」
「これ、から……?」
「せや。俺と一緒にゆっくりと探してこ。な?」
「……っ」


耳元で微かに息を飲んだ音が鳴ったと思ったら絡ませていた左手が力強く握り返された。
と同時に半分萎えていたそれもぎゅっと握り込められ図らずも声が漏れる。
そしてそのまま少し激しく扱われた。


「ふぁッ、ちょ待っ……あ、! んっ……」
「……敵わないなあ」
「! ぅ、ぁあッ……先ッぽ、ぁ、ゃやぁ……っんぅ」

一回イっとこうか、そう囁くとほぼ同じタイミングで先端の窪みが爪で軽く引っ掛かれた。
弾けた熱と霧散した思考。
吐精を待たずして先端から溢れる精液を長い指に絡め慣らしにかかる。


「……ッは、ぁ……んんっ」


射精の余韻の所為か傷付けない様にと注意が払われた僅かな動きにさえ腰にきた。
中を蠢く指と再度口に含まれる胸の突起に、吐き出して萎えたそれはあっという間に頭をもたげる。


「しらい、し……っ」
「あ、ぁあ……なまえッ、!」


あ、かん…なまえの掠れた声に今奥がきゅんとなった。
指じゃ届かない奥の方。
強請る様に髪の毛を引っ張れば苦笑を返される。


「力抜いて」
「、んぅ……ッは、ああ……なまえの、熱っ……」
「白石ん中、も熱い……」


全てを中に収めきったところで一息吐いたなまえは俺を気遣っているようだ。
恥ずかしいまでに開かされた太腿は支えるみたいに捕まれ触れる部分が熱い。
繋がっている部分から言葉にし難い俺の"好"と"愛"が伝われば良いのに。


「ぁ、ぅ……動、ぃッあぁあ! あ、はァッ……、ン、ぅあ、あ……ッ!」


強請る言葉を遮って動き出したなまえは容赦なく奥を抉る。
激しいでも乱暴ではない行為にひっきりなしに女みたいな声が上がった。


「……は、……かわい」
「なまえ……っ、んぅ! ……っは、ン、ぁ」


律動中のキスは苦しいからとなまえは嫌っていたのに、不意に口を塞がれる。
声は勿論唾液も呼気も全部持ってかれて、何も考えられなくなる。


「ん、ッンン……ふ、ぁんんんっ!!」


執拗に前立腺を擦られればあっという間に限界を迎えた中心。
達した嬌声はなまえの体内に消えていき、一拍の間を空けてなまえも俺の中で達した。






「白石、」
「……はぁ……、ん……なん?」
「俺やっぱ白石と付き合って良かったわ。ありがと」


照れた風に微笑を浮かべたなまえは可愛くて、愛しかった。




好≠愛
-ならばその差異とは-



(俺の十分の一でも伝われば、きっと)


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